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2023.08.01

会社設立の流れと必要書類は?スムーズに設立するコツとは?

会社設立は、手続き自体はそれほど複雑なものではありません。しかし、事前に準備することがいくつもあり、用意しなければならない書類も複数あります。作成と共に不備がないかのチェックをする必要があり時間がかかるものです。何回か経験している方ならともかく、初めて会社を立ち上げる方にとっては不安要素がたくさんあるはずです。こうした不安を取り除くためにも、前もって会社設立の流れをしっかりと押さえておくと共に、それぞれのプロセスで何をすべきかを知り綿密な準備を進めることが大切です。

今回は「会社設立の流れと必要書類」という観点から、その概要を確認していきましょう。

目次【本記事の内容】

1. 会社設立の流れ

会社という形で法人が成り立つためには、法務局への登記を済ませることが求められます。これが設立の流れの最終部分です。そのため、会社設立ですべきことというのは、登記申請を滞りなく終えるための準備とも言えます。そのプロセスをしっかりと押さえておき、不備なく登記ができるようにしたいものです。

資金の用意

会社設立にはある程度のお金がかかります。そして、会社を立ち上げて従業員を雇い始めると、給料支給の他にも社会保険料や税金などの支払いも出てきます。事業を軌道に乗せるためにも、あらかじめ余裕のある資金準備をしておく必要があるのです。 会社を始める際には、少なくても定款作成と定款の認証手数料、定款の謄本作成料がかかります。そして、法務局への登記申請の際には登録免許税の納付が必要です。こうした手続きだけでも25万円程度は見込んでおくべきです。それに加えて、会社には資本金というものが必要です。現在の制度では1円からでも会社設立に関する資本金準備は事足ります。もちろん、さまざまな事情を考慮してもっと多くの資本金を用意するケースも多々あります。こうした費用を前もって計算し、自由に使えるようにしておきましょう。

商号の決定

商号つまり会社名を決めます。一度決めた会社名を変更するには、商号変更のための登記手続きが必要になりますが、手間もコストもかかり、会社名を変えたことでの取引先やお客様とのトラブルも予期しなければなりません。こうした事態にならないためも、会社設立の段階でできるだけずっと使えるような商号を考えるべきなのです。 こうしたことからも、今の時代にしか通用しないような流行りのワードを使ったり、事業拡大の時に対応できない限定された業務の単語をメインにしたりするのは避けた方が良いでしょう。

定款の内容を決定

法務局への登記申請の際には、定款の謄本を提出する必要があります。そのため、事前に定款の内容を決めておかないといけないのです。たとえば、会社として行う事業目的は必須項目です。定款に記載されていない事業を開始する場合は、事業目的の追加登記が必要になります。それだけに、正確な記載をすることが大事なのです。 一方で、定款にある事業目的を盛り込んだからといって、開業してすぐにその事業をしないといけないわけではありません。そのため、現状では手を出さないとしても、将来的に開始したいと思っている事業は最初から定款に含めておいた方が良いでしょう。とはいえ、いろいろな可能性を考えて、とりあえずやれそうな事業はすべて記載しておこうというのはお勧めできません。実現が難しそうなほどたくさんの事業目的があったり、それぞれの事業があまりにもかけ離れたものばかりだとすると、定款認証をする公証人役場で疑われてしまうリスクがあるからです。最悪の場合、せっかく作った定款が認証されず作り直し、ということもありえます。

資本金の額を決める

2006年の法改正により、資本金は下限額が決められなくなり1円で会社設立が可能となりました。少なくても会社設立をするためには多額の資本金は不要ですので、ハードルは低くなっています。 とはいえ、これはあくまでも会社設立時の条件の話です。実際には、資本金が1円では事業を始めることはかなり難しいです。資本金は設立後の当面の運営資金となりますが、どんな事業であっても、なんらかの備品を購入したり作業用の道具や人件費を支払ったりする必要があり、事業によっては仕入れコストもかかりますので、資本金がなければ商売を始めることもできません。また、資本金が低いと取引先からの信頼を得られません。こうしたことから、開業に必要な分と共に半年程度の運転資金をベースとして、さらに余裕のある資金額を設定しておくべきなのです。

定款の作成と認証

今まで見てきた商号や事業目的、資本金額などはすべて定款に記載すべき項目です。他にも、会社設立時に出資する財産の価額や、設立発起人の情報、株式会社であれば発行可能な株式の数を記載します。必要事項を決めたら、定款として所定の書式にまとめて記載します。 定款は紙に印刷するタイプとPDF形式などの電子ファイルで保存する電子定款の2種類があります。どちらでも手続きはできるのですが、電子定款の場合は4万円かかる収入印紙代がかからないという利点があります。定款は一連の手続きでチェックされることが多い書類ですので、漏れや法的不備がないように専門家にチェックしてもらうと安心です。 作成した定款は公証人役場で認証してもらいます。3通の定款を作成し、1通は公証人役場に保管されます。もう1通は謄本として登記申請の際に用いられることになります。3通目は保管用ですので、社内の重要書類保管場所にしまっておきます。

印鑑の作成

登記申請をする際には、会社代表社印を登録する必要があります。会社印と銀行取引に使う銀行印、そして公的書類に押すための角印の3種類を作るのが一般的です。本格的な印鑑を専門店に頼むこともできますし、インターネットで気軽に作ることもできます。 印鑑ができたら法務局で実印登録をします。これを忘れると印鑑そのものを作っても実印と認められませんので、印鑑ができ次第すぐに登録をしてしまいましょう。その上で、会社印などは非常に重要なものですので社内で保管する場所と管理する人を決めておくことも大切です。

提出書類の作成と提出

登記申請ではいくつもの書類を提出しなければなりません。書類の詳細については後述します。書類によっては自分たちで作れるものやすぐに入手できるものもあれば、役所で作ってもらう必要がある書類も存在します。そのため、早めに必要書類のリストを作り、手元に用意しておきましょう。

資本金の入金

登記する時には、定款で定めた額の資本金が確かにあることを証明しなければなりません。そのため、事前に資本金を入金しておくことになります。といっても、まだ法人登記が完了していませんので、事業用の商号名義の銀行口座は作れません。そこで、設立発起人の個人的な銀行口座に入れるか、この時だけのための個人名の口座に入金しておきます。 入金後は、その口座の通帳の表紙部分と銀行名や口座番号などが記載されているページ、そして入金した資本金の明細ページをコピーします。その後、コピーを使って払い込み証明書を作成して、登記申請の際に提出することになります。

法務局にて登記申請

必要な準備がそろったら、いよいよ法務局にて登記申請の段階を迎えることになります。手元にある書類を印刷しておく、もしくは電子ファイルの場合はUSBメモリなどに保存して持っていきます。会社の登記申請は、定款にも記載されている本店所在地を管轄している法務局で行うことになります。代表取締役が住んでいる地域の法務局ではないので注意しましょう。 申請手続きは、設立した時の代表取締役が実施することになっています。ただし、委任状があれば他の人でも可能です。とはいえ、別の人が行うと確認作業など、余計な手続きが入ってきて面倒になることも多いのでできるだけ本人が行うと良いでしょう。弁護士や司法書士といった専門家が代行することも認められています。こうした専門家であれば手続きに慣れていますし、代行ができる士業ですので手続きが面倒になることもなくスムーズです。

2. 会社設立で必要となる書類

登記申請がうまく行くためには、提出書類がすべてそろっていて不備がないことが絶対条件です。申請の事前準備のほとんどは書類作成であると言っても良いでしょう。それだけに、会社設立を決意したのであれば、すぐに必要書類が何かを調べてチェックリストを作るようにしましょう。そして、どこでどのように作るのかを確認して、早めにすべてを手元に用意していくことでスムーズに手続きを終えられます。

発起人についての決定書

発起人は定款の末尾に記名捺印もしくは署名をする、いわば代表者のようなものです。多くの場合、会社設立にあたっての主導的な立場を取ってさまざまな手続きを行うと共に、出資をする人となります。そのため、株式会社を立ち上げるのであれば発起人は1株以上を持つことが求められています。この発起人が定款作成を始めとして各手続きの窓口となりますので、事前に決定書に誰が発起人となるかを記載しておき提出する必要があります。 発起人は1人だけでなく複数人定めることが可能です。ただし、発起人がたくさんいると、それだけ当事者が増えることになって物事をまとめるのが難しくなる恐れも出てきます。代表者を誰にするかや、利益配分についての詳細などを決めるのにそれぞれが自分の意見を主張することが考えられるからです。会社設立だけでなく、設立後の経営にも影響を与える決定ですので、じっくりと検討、決定して書類をまとめましょう。

設立時役員の就任承諾書

会社となった場合の、初期の役員を決めて書類にしておきます。会社の経営陣となる取締役が誰かを明示することによって、会社法などで指定されている組織的な運営をスムーズに行うと共に、責任の所在を明らかにすることができます。 当然、設立時に定めた役員はそのまま取締役に就任することになります。事前に承諾書という形で文書にしておくことで、開業してから揉めることがなくなります。取締役は原則として2年間の任期がありますが、非公開会社であれば、定款で定めることによって最長10年の任期とすることも可能です。合同会社には、任期がありません。定款を作成するときに、この点も考慮しておくと良いでしょう。

登記申請書

法務局に申請する内容を記した書類です。法務局で申請書の様式を公開していますし、どのように記入したら良いかも教えてくれていますので、ホームページや窓口などで確認してみると良いでしょう。登記申請書は設立する法人の種類によって書類の内容が異なります。

株式会社設立登記申請書

登記申請書のうち、株式会社の立ち上げの場合は、「株式会社設立登記申請書」というものを作ることになります。最も一般的な申請書ですので、法務局のホームページで簡単にダウンロードできるようになっています。申請書は、商号や発起人、本店所在地、課税標準金額、資本金などの必要項目をすべて記載して提出しなければなりません。内容によっては別紙で詳細を説明するものもありますので、法務局が示している記入例を参考にして漏れなく正確に記入しましょう。ここで記入した内容がそのまま登記されますので、慎重を期してチェックをすることが大事です。

印鑑証明書

登記申請をする際には、設立時に役員つまり取締役の印鑑証明書を添付することになっています。これは申請時に登録されているすべての取締役が対象となります。当然、それぞれの役員が自分の印鑑を実印登録していないといけません。そして、個別に自治体の役所窓口にて印鑑証明書を発行してもらうことになります。 誰かが代表して証明書を取るというわけにはいかないので、できるだけ早めにすべての取締役に伝えて書類を提出してもらうようにしましょう。特に、実印登録をしていないと、印鑑登録からしないといけません。本人にとっても大事な実印の作成と登録は急いでするものではありませんので、取締役が決まった時点でこのことを伝えて、実印と印鑑証明書の準備をしてもらうようにしましょう。

印鑑届出書

取締役の印鑑とは別に、会社の実印についても書類を提出しなければなりません。事前に作成した会社印を持っていき、会社の実印として登録することになります。個人の実印は自治体の役所で行いますが、同じイメージで会社の実印を法務局で登録するということです。この際に提出するのが印鑑届出書です。法務局に所定の用紙が用意されていますので、必要事項を記入し押印して提出します。 ちなみに、まだ会社の実印を作成していない場合は、代表者個人の実印を会社印として登録することもできますが、ずっと個人の印鑑を使用するのはトラブルの原因となりますので、設立後早い段階で会社印を作って登録し直した方が良いでしょう。

定款謄本

多くの場合、登記申請に必要な書類で最も時間がかかるのが定款でしょう。法律上定められている記載事項をすべて網羅し、不備のないように定款を作成します。その後、作った原本を公証人役場に持ち込んで認証を受けます。認証作業が完了すると、謄本が作成されます。謄本には印刷された書類に、赤色で「謄本」と判が押されていますのですぐに分かります。登記申請の際には、この定款の謄本を提出することになります。定款謄本はそのまま法務局に保管されます。 定款に記載されている項目、たとえば商号や代表人、資本金額などが他の提出書類のベースとなります。そのため、書類を準備する際には、定款の内容と合っているかを逐一確かめましょう。具体的には、資本金を入金した証明書に印字されている金額と定款で示した資本金額が合っているかという点です。また、定款に記した本店所在地と同じ表記で登記申請書の住所が記入されているかも確認しましょう。

3. 登記が終わった後の流れ

会社設立は登記が完了した時点で認められます。これで晴れて会社としての活動を行えるわけです。さまざまな事業を早めに開始するためにも、登記後にすべき作業をリストアップしておきましょう。やるべきことをやっていないのに登記ができたからと普通に企業活動を始めてしまうと、思わぬトラブルに見舞われることもあるので注意しましょう。

登記についての証明書の取得

登記が完了したら、法務局にて「登記事項証明書」を発行してもらいます。これは、確かに会社設立がなされたという点を証明するもので、いろいろな手続きで使われます。たとえば、税務署や年金事務所などでの登録手続きです。毎回法務局に行って発行してもらうのは手間がかかりますので、まとめて一度に発行してもらった方が良いでしょう。 登記事項証明書の申請は、窓口で行う場合は600円の手数料がかかります。オンラインで請求して郵送してもらう場合は500円となります。そして、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は480円です。この書類は起業時だけでなく、なんらかの手続きをする時に必要となることが多いので、発行方法をしっかりと覚えておきましょう。

会社印の証明書

前述のように登記申請の際には、会社印を登録するための印鑑届出書を提出します。登記が完了すると、同時に会社印も登録されることになります。銀行に法人名義での口座を開設する時などは、会社印そのものと共に印鑑証明書が必要となります。この会社印の印鑑証明書については法務局が発行することになっています。そのため、登記事項証明書を取得する時に、一緒に印鑑証明書も発行してもらうと良いでしょう。 印鑑証明書の発行に当たっては、個人の実印と同じように「印鑑カード」を作成することができます。カードを持っていれば、代表者でなくても印鑑証明書を発行できるようになります。実務において印鑑証明書を取得する機会は多いので、印鑑カードも早めに作っておくと良いでしょう。ただし、会社印と印鑑証明書は非常に重要なものですので、誰が管理するかなどはしっかりと定めて勝手に持ち出したり使用されたりしないようにしましょう。

税務関係の手続き

会社として事業を始めると、いくつもの税金の納付義務が発生します。そのため、会社設立と同時に税務署に届出をしなければなりません。まず、「法人設立届出書」です。設立から2カ月以内に、届出書と一緒に定款の写しを提出することになっています。「法人設立届出書」は都道府県および市町村にも提出します。この場合、定款の写しに加えて、登記事項証明書も提出します。その他、税務署には 「給与支払事務所等の開設届出書」も同時に出します。これは、従業員への給料支払いをするために必要な書類であり、源泉徴収をして徴収した税金を納付することを目的として作る書類です。もし、従業員が9人以下と小さい規模でスタートする場合には、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」というものを出すこともできます。これは、通常は毎月源泉徴収した税金を納付しなければならないところ、半年に1回にまとめられるという制度を利用するためのものです。 他にも、必要に応じて「棚卸資産の評価方法の届出書」や「青色申告の承認申請書」なども出します。書類の数が多く複雑な点もあるので、税理士などのサポートを受けると安心です。

社会保険についての手続き

会社を設立したら、社会保険に加入する義務があります。厚生年金・健康保険・介護保険は、、会社設立後5日以内に年金事務所で手続きします。社長1人の会社であっても、役員報酬の支払いがあれば加入することになります。また、従業員を雇用する場合は、雇用保険・労災保険の加入も必要です。会社設立後10日以内に、雇用保険は公共職業安定所、労災保険は労働基準局で手続きします。期間が短いので、登記申請前に準備を進めておいた方が良いでしょう。 それぞれの保険制度で複数の届出書を作成し提出することになります。また、届出書そのものの他に、必要に応じて添付書類を出すのですが、たいていはかなりの種類が求められます。書類作成に時間もかかりますので、専門家にサポートを求めた方が確実です。

4. まとめ

会社設立の流れは、提出書類を準備して法務局に登記申請を行うというシンプルなものです。しかし、この時に提出する書類が多く、しかも事前にさまざまな決定をしていないと作成できないものが多くあります。また、会社設立後もすぐにすべきことがたくさんあります。それだけに、できるだけ早い段階で、手続きの流れと各プロセスで必要なものをリストアップしておき、着実に準備を進めることが肝心です。スムーズに手続きを終えて事業をスタートできるよう、税理士や社労士などの専門家のサポートを受けることも大事です。