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2024.12.16

確定申告の相談はどこでできるのか?申告をサポートしてくれる機関について解説します

毎年、2月16日から315日は所得税の確定申告期間です。この時期、税務署には多くの人が訪れ混雑しますが、確定申告をサポートしてくれる機関は他にもあります。今回は確定申告の相談を中心に、納税に関わる民間団体について解説します。

税務署の申告相談

税務署における申告相談にはいろいろな方法があるので、ご自身にあった相談方法を選択しましょう。

電話相談

国税に関する一般的な相談(制度や法令等の解釈・適用についての相談や手続案内など)については、各国税局に設置する「電話相談センター」において国税職員等が質問に回答してくれます。受付時間は、土日祝日および122913日を除く830分~17時です。国税相談専用ダイヤル(0570-00-5901)に電話をかけ、音声案内に従い、相談する内容の番号(1→所得税、2→源泉徴収・年末調整・支払調書、3→譲渡所得・相続税・贈与税・財産評価、4→法人税、5→消費税・印紙税、6→その他)を選択すると、電話相談センターの担当者につながります。税務署の代表番号に電話した場合も、電話相談センターにつながるようになっています。
具体的に書類や事実関係を確認する必要がある場合など、電話での回答が困難な相談内容については、所轄税務署にて相談を受け付けています。面接による相談は、面接時間の十分な確保や持参する必要書類などを伝える必要があるため、事前に相談日時等の予約が必要です。

税務署または確定申告会場で相談する

税務署における確定申告の相談は1年中受け付けていますが、確定申告時期には特設会場が設置され、一部の会場では所定の日曜日に相談および受付を行っています。また、確定申告会場への入場には、会場内の混雑緩和のために入場できる時間を区切った「入場整理券」が必要です。入場整理券は各会場で当日配布されますが、LINEを通じたオンライン事前発行も可能です。

国税庁ホームページで調べる

国税庁のホームページでは、医療費控除や住宅借入金等控除等のよくある質問に対する一般的な回答を公開しています。また、AIを活用した税務相談チャットボットに相談することも可能です。

個人事業者の記帳

確定申告をするうえで、事業所得や不動産所得などがある場合は帳簿の記帳・保存義務があります。税務署では記帳指導も行っています。

記帳・帳簿等保存制度

帳簿には、収入金額や必要経費に関する事項について、取引の年月日、相手方の名称、金額や日々の売上・仕入の合計金額等を記載します。記帳については、一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額をまとめて記載するなど簡易な方法で記載してもよいことになっています。なお、消費税の課税事業者は、軽減税率の対象となる売上、・仕入がある場合、税率ごとに区分して帳簿に記載する必要があります。また、仕入については、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)からのものか否かの区分も必要です。

収入金額や必要経費を記載した帳簿のほか、取引に伴って作成した帳簿や棚卸表、請求書、領収書などの書類は保存期間が決められています。それぞれの保存期間は以下のとおりです。

*青色申告の場合

・帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛長、経費帳、固定資産台帳等  7

・決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など  7

・現金預金取引等関係書類 領収書、小切手控、預金通帳、借用書など  7年(前々年の事業所得および不動産所得が300万円以下の場合は5年)

・その他の書類 取引に関して作成し、または受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)  5

*白色申告の場合

・収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)  7

・業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)  5

・決算に関して作成した棚卸表その他の書類  5

・業務に関して作成し、または受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類  5

令和4年以降、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円超の場合は、その業務に係る現金預金取引等関係書類は5年間の保存が必要です。

消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書や、インボイス発行事業者として交付した適格請求書の写しおよび提供した電磁的記録については、上記に関わらず7年間保存しなければなりません。売上に関する帳簿を保存していなかったことや帳簿の売上についての記載が不十分なことが税務調査において把握された場合は、加重税が重くなることがあります。

国税庁・税務署からの情報提供

帳簿の記帳や決算のやり方について、納税者本人が学ぶための情報提供として、国税庁は、YouTubeによる動画や、詳しく説明したパンフレットをホームページに掲載しています。納税者本人で学ぶことが不安な場合には以下の対策が講じられています。

・記帳・決算説明会
税務署では、白色申告の個人事業者を対象に記帳に関する説明会を開催し、具体的な記帳の仕方等についての説明を無料で実施しています。

・記帳指導
記帳の仕方のほか、一般的な決算における帳簿の処理や確定申告書等の作成に至るまでの一貫した指導を、各国税局が事業者に委託して行っています。

・記帳指導機関の紹介
記帳の仕方については、青色申告会・納税協会や商工会議所・商工会等の記帳指導機関においても、相談・指導を行っています。

税務署以外の申告相談

税務署以外でも申告相談を受け付けています。また、有料で会員になることにより、申告相談だけでなく有用な情報を得ることができる先もあります。

市区町村役場

確定申告の時期になると、相談窓口を開設する市区町村役場があります。住宅ローン控除や医療費控除、ふるさと納税などの一般的な申告については対応していても、事業所得などには対応していない場合もあるので、自身の申告内容について対応しているかの事前確認が必要です。

税理士会

税理士会では年間を通して税理士による無料相談を行っています。受け付ける相談内容や開催日時、予約の要否は税理士会によって違うので事前確認が必要です。
また、日本税務研究センターでは電話による税務相談室が設置されています。相談税目は、法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税および譲渡所得で、月曜日~金曜日の午前10時~1145分および午後1時~245分までが受付時間となっています。一般的な税務に関する相談が対象となり、具体的個別事案に関する相談をすることはできません。

青色申告会

青色申告会は、申告納税制度の確立と小規模企業の振興への寄与を目的として、個人事業主を中心として組織される納税者団体であり、一部の地域を除き税務署の管轄地域ごとに組織されています。
青色申告会の会員は、記帳・決算・申告の相談が可能です。地域ごとに組織された団体であるため、地域の事情や業種ごとの特徴を踏まえて、複式簿記の帳簿のつけ方、貸借対照表の作り方などをじっくりと相談することができます。その他のメリットは以下のとおりです。

・経営や融資の相談ができる
経営相談のために税理士や弁護士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家を紹介してもらうほか、無料相談会なども開催されています。また、日本政策金融公庫などの融資制度の斡旋をはじめ、各種の融資制度を取り扱っています。

・異業種との交流ができる
多業種にわたる会員が参加しているため、研修会や親睦会を通じて異業種の事業者と交流することができ、ビジネスチャンスにつながる可能性もあります。

・共済などの福利厚生が利用できる
青色申告会の会員およびその家族等は、全青色共催に加入することができます。掛金は必要経費として損金算入することができます。

一方、デメリットは以下のとおりです。

・入会金と会費が発生する
青色申告会のサービスを利用するためには、入会金と会費の支払が必要です。金額は地域によって異なるので、確認が必要です。

・税務相談は一般的な内容まで
青色申告会は個人事業者を中心として組織されている団体であり税理士などの職業専門家ではないため、税務相談については一般的な内容に留まります。

納税協会

納税協会は、税知識の普及に努め、適正な申告納税の推進と納税道義の高揚を図ることに力を注ぎ、その事業活動を通して、税務行政の円滑な執行に寄与し、企業経営の健全な発展と、明るい地域社会の発展に寄与することを目的としています。大阪国税局管内(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の近畿24県)に83の納税協会があり、約124千人社の会員がいます。会員は会費の支払が必要です。
納税協会の活動内容に税のアドバイスがあります。税に関する相談から記帳の仕方や経理処理、申告書の作成、マイナンバーの取り扱いなど税理士によるアドバイスを受けることができます。また人材育成のサポートとして、簿記教室や税法関係実務講座、セミナーを行っています。その他に、各部会の設置や研修会などの開催による交流の場の提供、福祉制度の充実や専門書や会計ソフトの販売等による経営に役立つサポートなどの活動を行っています。

商工会議所

日本における商工会議所は、1878年(明治11年)3月に渋沢栄一により設立された「東京商法会議所(後の東京商工会議所)」が始まりで、現在は全国各地にある515カ所の商工会議所を会員とし、商工会議所法に基づく民間の地域総合経済団体として運営されています。
商工会議所の支援事業は、経営相談、融資制度・補助金、保険・共済、検定試験、ビジネス交流など多岐に渡っています。税務申告の記帳指導も行っており、確定申告の時期になると無料の税務相談を開催しています。その他のメリットは以下のとおりです。

・経営に関する相談ができる

・商工会議所独自の融資制度がある

・異業種との交流ができる

・共済などの福利厚生が利用できる

一方で、加入金と年会費を支払う必要があるので、コストがかかるというデメリットもあります。

商工会

商工会は、地域の事業者が業種に関わりなく会員となって、お互いの事業の発展や地域の発展のために総合的な活動を行う団体で、国や都道府県の小規模企業施策(経営改善普及事業)の実施機関でもあります。商工会は、商工会法に基づいて、主に町村部に設立された公共団体で、令和4年4月1日現在で全国に1,643の商工会があります。市部には主に商工会議所が設立されており、組織運営面などで異なる面もありますが、商工会・商工会議所は同様の活動を行っています。

関係民間団体との協調

申告相談を受け付けている民間団体は上記のとおりいくつかあります。国税庁では関係民間団体の協力を得て、各種説明会等をはじめとした様々な取組を通じて、積極的な周知・後方に取り組んでいます。
関係民間団体は、e-Taxの利用拡大に向けた取組やマイナンバー制度の普及・定着に向けた取組、「税を考える週間」における各種行事の共同開催を推進するなど、各団体間の連携・協調の強化を図りながら、適正な申告納税制度の実現や税知識の普及等のために大きな役割を果たしています。
国税庁レポートにおいて、確定申告相談を行う上記団体のほかに以下の団体が挙げられています。

・法人会
法人会は「税知識の普及や、適正・公平な申告納税制度の維持・発展と税務行政の円滑な執行に寄与すること」を目的として結成された団体であり、租税教育・税の啓発活動、税と経営の研修などを行っているほか、国税庁後援事業である「『自主点検チェックシート』を活用した企業の税務コンプライアンス向上のための取組」や「税に関する絵はがきコンクール」を行っています。

・間税会
間税会は「間接税についての知識を習得し、自主的な申告納税体制の確立を通して、円滑な税務運営に協力すること」を目的として結成された団体であり、消費税に関する税知識の普及、消費税完納運動の推進および『税の標語』(国税庁後援)の募集などの活動を行っているほか、税制や税の執行の改善のための提言を行っています。

・納税貯蓄組合
納税貯蓄組合は「納税資金の備蓄による各種税金の円滑な納付」を目的として組織された団体であり、各納税貯蓄組合では、期限内完納を推進するための取組や中学生の「税についての作文」(国税庁共催)の募集などの活動を行っています。

まとめ

確定申告に悩んだ時の相談先として最初に浮かぶのは税務署ですが、税務署以外の民間団体においても相談を受け付けています。会費などのコストがかかる場合もありますが、税務相談だけではなくその他有益な情報を得ることもできるので、自身のニーズに合った相談先を検討してみましょう。