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2026.03.23

飲食店経営者が活用できる補助金・助成金とは?~初めての方にもわかりやすく、資金調達の選択肢を解説します~

コストの高騰、人手不足、多様化する顧客ニーズへの対応など、飲食店を取り巻く環境は厳しさを増しています。このような状況下で事業を継続的に発展させるためには、国の支援策である「補助金」や「助成金」を賢く活用することが、経営の安定化と成長のための鍵となります。

「補助金や助成金は申請が面倒」「自分の店には関係ない」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は多くの制度が、店舗の改装、新しいメニューの開発、集客、そして人手不足を解消するためのITツールの導入など、飲食店の具体的な課題に対応できるよう設計されています。

今回は、初めての方にもわかりやすく、飲食店が特に活用しやすい代表的な補助金・助成金制度について、その概要から活用事例、そして申請のポイントまでを解説します。

補助金・助成金は、原則として返済の必要がない資金です。この貴重な資金を活用し、皆様の事業をさらに発展させるための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

補助金と助成金

まずは、補助金と助成金についての概略を説明します。

飲食店にとって補助金・助成金が必要な理由

飲食店経営では、以下のような課題がよく挙げられます。

・開業資金・設備投資の負担が大きい

・原材料価格や人件費の高騰による利益率の低下

・デジタル化・キャッシュレス化などへの対応が遅れがち

・人手不足によるサービス低下や業務負担の増加

これらの課題に対応するために、新しい設備導入・業務効率化・販路拡大・人材育成などの投資が必要になります。
しかし、資金面の制約から「やりたいけれどできない」というお悩みも多いのではないでしょうか。

そのようなときにこそ、補助金・助成金制度をうまく活用することが、経営改善や事業成長のカギとなります。

補助金と助成金の違い

補助金・助成金は、国や自治体が企業や事業者に対して支給する「返済不要の資金」です。似たような言葉ですが、制度の性質や申請方法に違いがあります。

1.補助金とは

補助金は、特定の事業活動(設備投資、販路拡大、業務改善など)に対して支給される資金です。公募制であり、申請書類や事業計画書を提出したうえで審査を受け、採択された事業者のみが受給できます。

2.助成金とは

助成金は、主に雇用や労働環境の改善を目的とした制度で、要件を満たせば原則として受給できます。補助金と比べて競争性が低く、申請のハードルも比較的低い傾向があります。

飲食店経営者が、店舗改装や設備投資、販路開拓などで活用を検討するのは主に「補助金」、雇用や人材育成、賃上げなどで活用を検討するのは主に「助成金」となります。

【事業拡大・設備投資向け】代表的な補助金

ここからは、事業の成長や大規模な投資を支援する、主な補助金をご紹介します。

小規模事業者持続化補助金

1.目的と概要

小規模事業者(飲食業の場合、常時使用する従業員数が5人以下)が、策定した「経営計画」に基づき、販路開拓や生産性向上のために行う取り組みを支援する補助金です。

補助金の中では比較的少額ですが、活用できる経費の幅が広く、初めて補助金に挑戦する方にもおすすめです。

2.補助上限額と補助率

①通常枠

上限50万円、補助率2/3

②特別枠(賃金引上げ枠、創業枠など)

上限200万円、補助率2/3赤字事業者など要件により最大3/4

③インボイス特例

免税事業者がインボイス発行事業者に登録する場合、上記上限額に50万円が上乗せされます。

3.飲食店での主な活用事例

①広報費

・新メニューやテイクアウトのチラシ作成・ポスティング費用

・お店の公式ウェブサイトや予約システムの制作・改修費用

・集客のためのSNS広告費用(一部対象)

②機械装置等費

新商品開発のための高性能な調理器具の導入

効率化のためのPOSレジ、タブレット型注文システムの導入(デジタル化・AI導入補助金との選択となるケースがあります)

③店舗改装費

・テイクアウト・デリバリー用の専用窓口設置工事

・集客力向上のための内装の一部改装(単なる原状回復や、全店舗改装は対象外)

4.申請のポイント

・商工会・商工会議所から「事業支援機関確認書」を発行してもらう必要があります。締め切り数週間前から、早めに行動することが鉄則です。

・「販路開拓」という目的と、導入する経費が具体的にどう結びつくかを、事業計画で明確に説明することが採択の鍵となります。

飲食業労働生産性向上支援補助金

1.目的と概要

深刻な人手不足に悩む飲食業界に対し、AI、ロボット、IoTなどの先端技術を導入することで「少ない人数でも回る店舗」や「従業員が楽に働ける環境」を構築し、労働生産性を飛躍的に向上させることを目的としています。

2.補助上限額と補助率

この補助金は、改善に取り組む「領域」ごとにカウントされるのが特徴です。

①補助金上限:500万円/各領域(調理・接客・店舗管理)

3領域を組み合わせて最大1,500万円

②補助率:定額(交付決定額を上限として、事業実施期間に要した対象経費の全額を補助、実質100%)

3.飲食店での主な活用事例

①調理の機械化・標準化

・野菜や肉のカットを自動化・高速化し、仕込み時間を短縮する

・鮮度を保った長期保存により食材ロスを削減し、アイドルタイムの仕込みで作業を平準化する

・焼く・蒸す・煮るなどを1台で大量に行い、調理工程を自動化・効率化する

②接客のロボット化

・お客様のスマホ等で接客注文・決済を行い、注文聞き取り業務を削減し、オーダーミスを防止する

・料理の 運搬や 片付けをロボットに任せ、スタッフの会計業務を自動化し負担を軽減する

・会計業務を自動化し負担を軽減する、レジ締め作業の簡素化を図る

③データ経営

・在庫状況をリアルタイムで把握し、発注データを自動作成することで、店舗管理過剰在庫や欠品を防ぐ

・売上や 顧客データを動画マニュアル(教分析し、人気メニューの把握・開発や販売戦略に役立てる

4.申請のポイント

・設備・機器等の導入はリース限定であり、購入・レンタルは対象になりません。

・補助金の目的が生産性向上なので、 導入後の改善効果を数字で示すことが必須です。

・「交付決定」の通知を受ける前に、機器の発注・契約・支払いを行ってはいけません。 これを破ると1円ももらえなくなるため、必ず事務局の承認を待ってください。

デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)

1.目的と概要

中小企業・小規模事業者が、自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する経費の一部を補助することで、業務効率化や労働生産性の向上を図るための補助金です。

飲食店の深刻な人手不足を解消する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」投資に特化しています。

2.補助上限額と補助率

申請する枠(通常枠、インボイス枠など)によって補助額が大きく変動します。

①補助上限額

5万円~450万円(枠による)

②補助率

1/2~4/5(枠やツールの機能によって異なる)

3.飲食店での主な活用事例

①顧客対応の効率化

・モバイルオーダーシステム、テーブルオーダーシステムの導入

・クラウド型予約・顧客管理システムの導入

②レジ・会計業務の効率化

・インボイス制度対応のPOSレジシステムの導入

・クラウド会計ソフト、給与計算ソフトの導入

③情報共有の迅速化

・在庫管理・原価管理システムの導入

④申請のポイント

・IT導入支援事業者(ITベンダー)と協力し、事務局に事前登録されたITツールを選定・申請することが必須です。

・導入によって、具体的に「どの業務時間がどれだけ短縮されるか」「売上がどれだけ増加するか」を数値で示し、生産性向上への貢献度をアピールすることが重要です。

中小企業省力化投資補助金

1.目的と概要

人手不足に悩む中小企業・小規模事業者が、IoTAI、ロボットなどの汎用的な省力化製品を導入し、人手不足の解消や生産性の向上を図ることを支援する注目の補助金です。

中小企業省力化投資補助金には、カタログに掲載された汎用製品を選択・導入する「カタログ注文型」と、個別の現場や事業内容に合わせたオーダーメイド設備やシステムを導入する「一般型」の2つの種類があります。

2.補助上限額と補助率

①補助上限額(従業員規模で変動)

カタログ注文型:500万円〜1,500万円

一般型:750万円~1億円

②補助率

1/2~2/3

3.飲食店での主な活用事例

人手不足対策に直結する、汎用性の高い省力化機器の導入が中心となります。

①ホール・配膳業務

・配膳・下げ膳ロボット

・自動受付・精算機

②調理・洗浄業務:

・自動調理ロボット、自動洗浄機

③バックヤード業務:

・在庫管理の自動化システム

4.申請のポイント

・「求人サイトに掲載した実績(スクリーンショット可)」や「直近の残業時間の記録」など、客観的に人材不足に困っている状況を明確にすること。

・人手不足解消と生産性向上に直結する具体的な効果を、事業計画で明確にすること。

・カタログに載っている製品を扱っている「販売事業者」が、申請をサポートしてくれる仕組みになっています。信頼できる業者を見つけ、一緒に「事業計画」を練ることが合格への近道です。

【雇用・人材育成向け】代表的な助成金

助成金は、主に厚生労働省が管轄し、「人」に関する取り組みを支援します。要件を満たせば原則受給できるものが多いため、積極的に活用すべき制度です。

業務改善助成金

1.目的と概要

生産性の向上を目的とした設備投資等を行い、かつ事業場内で最も低い「最低賃金」を引き上げる中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。

補助金と助成金のハイブリッドのような制度で、賃上げと設備投資の両方に活用できます。

2.助成上限額と助成率

①助成上限額

30万円~600万円(賃上げ額や引き上げる人数に応じて変動)

②助成率

3/4~4/5

3.飲食店での主な活用事例

・最低賃金を地域別最低賃金より高い水準に引き上げるとともに、業務効率化のために高性能な食洗機、券売機、モバイルオーダーシステムなどの設備を導入する。

・賃上げに伴うコスト増を、効率化投資で相殺し、さらに助成金で支援を受けることができます。

4.申請のポイント

賃金引き上げ計画と、それによる生産性向上に資する設備投資計画をセットで提出する必要があります。

「事業場内最低賃金」を計画通りに引き上げ、それを維持することが必須条件です。

キャリアアップ助成金

1.目的と概要

非正規雇用の労働者(パート、アルバイトなど)のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善(賃金規定の改定、健康診断制度の導入など)を行った事業主を支援する助成金です。

人手不足解消のため、優秀な人材の定着を図りたい飲食店に最適です。

2.助成上限額

コースによって異なります。

①正社員化コース

非正規雇用者を正社員化した場合、1人あたり15万円~80万円(要件によって変動)

②賃金規定等改定コース

非正規社員の基本給を3%以上増額する賃金規定に改定した場合、1人あたり2.6万円~7万円

上記のほかに、障害者正社員コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース・短時間労働者労働時間延長支援コースがあります。

3.飲食店での主な活用事例

・アルバイトとして採用した従業員を、半年間の試用期間を経て正社員として登用し、定着を促す。

・非正規社員にも正社員と同様の昇給・賞与制度を導入し、モチベーションを向上させる。

4.申請のポイント

・就業規則や賃金規定を事前に整備し、労働局に届け出ている必要があります。

・正社員化後も、一定期間雇用を継続することが求められます。

補助金・助成金申請を成功させるためには

補助金・助成金は、皆様の事業の未来を拓く強力なツールですが、申請には戦略が必要です。採択・受給を勝ち取るための秘訣を4つご紹介します。

自社の「経営課題」を明確にする

「お金が欲しい」という動機ではなく、「この課題を解決し、事業をこう成長させるために資金が必要だ」という視点が不可欠です。

・課題: 季節メニューの商品開発に時間がかかりすぎる。

・補助金活用例: 高性能な調理・加工設備を導入し、開発時間をXX%短縮し、他社にない新メニューを開発する。

「審査項目」を意識した事業計画の作成

補助金の採択は、事業計画の優劣で決まります。公募要領に記載されている「審査項目」に沿って、論理的で説得力のある文章を作成しましょう。

特に大型補助金では、「革新性・優位性」「事業の実現可能性」「定量的な成果(売上・利益の増加)」を具体的な数値目標とともに示すことが重要です。

必ず「交付決定後」に発注・契約する

補助金の最も重要なルールです。補助金は、原則として「交付決定通知」を受け取る前に発注・契約・支払いをした経費は、すべて補助対象外となります。

【正しい流れ】 補助金を申請→採択・交付決定→設備を発注・支払い→補助金受給

交付決定を待たずに事業を進めてしまうと、補助金が一切出なくなるリスクがありますので、スケジュール管理を徹底してください。

専門家(認定支援機関)の力を借りる

大型の補助金申請や、複雑な労働法規が関わる助成金の申請は、専門知識が必要です。

税理士や中小企業診断士など、国の認定を受けた「認定経営革新等支援機関」である専門家と連携することで、補助金の制度理解を深め、採択率を高める事業計画の作成支援、そして煩雑な手続きの代行・サポートを受けることができます。

まとめ

補助金・助成金は、皆様の事業を成長させるための貴重な「返済不要の資金」です。単なる資金調達ではなく、「未来の成長」への投資として捉え、積極的に活用されてみてはいかがでしょうか。

補助金・助成金制度は、公募時期や要件が頻繁に更新されます。最新の情報を正確に把握し、自社の経営状況や計画に最適な制度を選択することが、成功への第一歩となります。