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2024.05.22

損金とは?損金と費用・経費の違い、損金算入と不算入について解説します。

法人税の計算をするときに、費用・経費として会計処理していたものに対して「損金算入できません」と言われたことはありませんか。会計で取り扱う経費・費用と、税務で取り扱う損金は必ずしも一致しません。今回は税金の計算をする際の損金について解説します。

会計と税務の違い

法人の決算では、事業年度の損益を計算し、計算された損益を基に法人税額の計算をします。利益の計算が会計、税額の計算が税務です。以下でその違いについて説明します。

会計とは

法人では、日々の取引やお金の出入りを記録し、決算時には法人の経営成績や財政状況をまとめた決算書を作成します。決算書には、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・キャッシュフロー計算書・個別注記表などがありますが、これらの作成書類は企業の規模や法律によって異なります。この決算書の作成に係る一連の手続きが会計です。また、決算書は法人の確定申告にあたり税務署への提出義務を有していますが、株主や金融機関などの利害関係者に対して法人の状況を報告する役割も担っています。

会計には財務会計と管理会計があります。決算書の作成は財務会計であり、法人の財務状況を伝えるために作成される外部に向けた会計です。対して管理会計とは、経営者らが経営管理に活用するために行う内部に向けた会計です。管理会計では、予実管理・経営分析・原価管理・資金繰り管理などが行われ、経営者の意思決定に必要な情報を提供しています。財務会計は定められ期間ごとに会計基準に準拠した方法で財務諸表を作成しなければなりませんが、管理会計の実施は法人の任意であり、内部に向けたものであるため、期間・内容・書式などを法人で自由に選択することができます。

税務とは

税務とは、法人が経営活動によって得た所得に対する税額を算出することです。財務会計の目的が、法人の経営成績や財政状況を利害関係者に明らかにすることであるのに対し、税務の目的は、税法に準拠した適切な税額計算を行うことにより、公平な課税や税収確保を実現することにあります。

法人税の計算

法人税は、益金から損金を控除した所得に対して、一定の法人税率を乗じて税額を算出します。

法人税の課税の対象となる所得

法人税の課税の対象となるのは、各事業年度の所得であり、各事業年度の所得とは、法人税法第22条第1項において「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」と規定されています。

法人は、原則として各事業年度終了の日の翌月から2カ月以内に、確定した決算に基づき確定申告書を提出しなければなりません。確定した決算に基づく確定申告書とは、株主総会の承認を受けた確定決算における損益に対して、申告調整を行って計算した所得金額や法人税額等のほか、法人税法に定められた事項を記載した申告書のことです。所得の金額は、財務会計における損益の金額に、法人税法の規定における調整項目を加算又は減算して算出されます。

益金とは

益金の額は「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする」と定められています(法人税法第22条第2項)。財務会計における収益のうち、益金にならないものを所得から控除し(益金不算入)、財務会計上は収益に計上されていなくても、法人税法上は益金となるものを所得に加算します(益金算入)。益金不算入には受取配当金や税金の還付金があり、益金算入には売上の計上漏れや引当金の取り崩しがあります。

損金とは

損金の額は、以下のとおり規定されています(法人税法第22条第3項)。

1.当該事業年度の収益に係る売上原価、完成原価その他これらに準ずる原価の額
2.当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く)
3.当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

財務会計上は原価・費用・損失に計上されていなくても、法人税法上は損金になるものを所得から減算し(損金算入)、財務会計における原価・費用・損失のうち、損金とならないものを所得に加算します(損金不算入)。

損金算入

財務会計上は費用に計上されていなくても、法人税の計算を行う際に所得金額から控除される損金算入について、代表的なものを説明します。

法人事業税及び地方法人特別税

法人事業税は損金にできる税金ですが、酒税や法人事業税など申告納税方式による税金については、損金に算入できる時期は申告書を提出した日の属する事業年度になります。法人税の確定申告書の提出期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2カ月以内となるので、申告書の提出日は当該事業年度の翌事業年度となります。法人の決算において、法人事業税を含む法人税等の金額を未払法人税等として計上した場合、翌事業年度の法人事業税の支払に係る会計処理は以下のとおりとなります。

 未払法人税等 ××× / 現預金 ×××

未払法人税等は負債項目であり経費処理がされていないので、損金算入して法人事業税の金額を所得の金額から控除します。

欠損金の繰越控除

欠損金の繰越控除は、各事業年度の法人税負担の平準化を図るための制度です。各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額がある場合には、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されます。ただし、平成3041日前に開始した事業年度において生じた欠損金の繰越期間は9年となっています。また、中小法人等については当該事業年度の所得の金額まで損金算入できますが、それ以外の法人における損金算入限度額は所得の金額に対して以下の率を乗じた金額です。

①平成2441日から平成27331日開始事業年度:80
②平成2741日から平成28331日開始事業年度:65
③平成2841日から平成29331日開始事業年度:60
④平成2941日から平成30331日開始事業年度:55
⑤平成3041日から開始事業年度:50

また、その他の適用要件として、欠損金の生じた事業年度以降連続して確定申告書を提出していること、欠損金の生じた事業年度に係る帳簿書類を保存していること、欠損金の控除は古い年度から順次行うこととされています。

貸倒損失認定損

法人の有する金銭債権について、以下に掲げる事実に基づいて切り捨てられた金額は、財務会計において損失として計上されていなくても損金算入されることになります。

1.会社更生法、金融機関等の更正手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額
2.法令の規定による整理手続きによらない債権者集会の協議決定および行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額
3.債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して書面で明らかにした債務免除額

損金不算入

財務会計上は費用に計上されていても、法人税の計算を行う上で所得金額に加算される損金不算入について、代表的なものを説明します。

役員給与

法人が役員に対して支給する給与(退職給与、新株予約権によるもの、使用人兼務役員の使用人分給与、隠ぺい・仮装によるものを除く)のうち、以下に該当しない給与の額は損金不算入です。

①定期同額給与
1カ月以下の一定期間ごとに支払われる給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます。支給額を変更できるのは、原則として事業年度開始の日から3カ月以内です。

②事前確定届出給与
所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与です。損金算入するためには、税務署への届出が必要であり、提出期限は、事前確定届出給与を株主総会等で決議した日または職務を開始する日から1カ月を経過する日と、当該会計期間開始の日から4カ月を経過する日、いずれか早い日付となります。

③非同族会社の利益連動給与
同族会社に該当しない法人が業務を執行する役員に対して支給する利益に関する指標を基礎として算出する給与で、一定の要件を満たしたものです。

上記①~③については損金算入されますが、そのうち不相当に高額な部分の金額については損金に算入されません。高額かどうかの判断には、実質基準と形式基準が用いられます。実質基準とは、役員の職務内容、法人の収益や従業員の給与の状況、同業種・同規模の他法人の状況などに照らし、職務の対価として相当であると認められる金額を超える部分の金額を過大役員報酬と判断します。形式基準とは、定款や株主総会で定めた役員給与の限度額を超える部分の金額を過大役員報酬と判断します。両基準において過大役員給与と判断された金額のうち、いずれか多い方が損金不算入金額となります。
また、事実を隠ぺいし又は仮装経理することによりその役員に対して支給する給与の額も、損金の額に算入されません。

交際費

交際費は原則として全額が損金不算入とされていますが、法人の区分に応じ一定の措置が設けられています。期末資本金1億円以下の中小法人については、交際費のうち飲食費に該当する金額の50%を超える部分の金額、または800万円に当該事業年度の月数を乗じて、これを12で除して計算した金額を超える部分の金額のいずれかが損金不算入となります。
期末資本金が1億円超100億円以下の法人においては、交際費のうち飲食費に該当する金額の50%を超える部分の金額が損金不算入となり、資本金100億円超の法人においては、支出する交際費の全額が損金不算入となります。
また、飲食等に支出した金額を、その飲食等に参加した人数で除した金額が令和641日以降は10000円以下である費用は交際費の金額から除かれます(但し、令和6331日までは5,000円)。なお、この規定を適用するには、一定の事項を記載した書類を保存しておかなければなりません。

租税公課

法人が経営活動を続けるうえで様々な税金を納める必要がありますが、税金にも損金算入されるものとされないものがあります。損金不算入の税金には以下のものがあります。

・法人税及び法人地方税
・都道府県民税及び市町村民税の本税
・延滞税
・延滞金(納期限の延長に係るものを除く)
・過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税
・過少申告加算金、不申告加算金
・印紙税の過怠税
・交通反則金などの罰金や科料、過料
・法人税額から控除する所得税、復興所得税および外国法人税

損金の額に算入される税金の損金算入時期は、酒税や事業税などの申告納税方式による税金は、申告書を提出した日の属する事業年度であり、不動産取得税や自動車税などの賦課課税方式による税金は、賦課決定のあった日の属する事業年度になります。

寄附金

法人税法において、法人が寄附金を支出したときは、原則として一定額を超える部分の金額は損金の額に算入されません。寄附金は大きく3種類に分けることができますが、種類に応じて損金算入限度額が決められています。

①指定寄附金等
国・地方公共団体に対する寄附金および財務大臣の指定した寄付金は全額損金算入されます。具体例は以下のとおりです。
・国または地方公共団体に対する寄附
・日本学生支援機構に対する寄附金で学資貸与資金に充てるもの
・日本赤十字社に対する寄附金で財務大臣の承認を受けたもの

②特定公益増進法人等に対する寄附金
特定公益増進法人の主たる目的である業務または認定特定非営利活動法人等の特定非営利活動に係る寄附金には損金算入限度額があり、限度額を超える部分については損金不算入です。
・独立行政法人に対する寄附金
・社会福祉法人に対する寄附金
・日本学生支援機構に対する寄附金で経常経費に充てるもの

③一般の寄附金
一般の寄附金についても損金算入限度額があり、限度額を超える部分については損金不算入です。特定公益増進法人等に対する寄附金よりも、限度額は少なく定められています。
・政治団体、宗教法人、町内会への寄附

減価償却費の限度超過額

事業用資産は時の経過によって価値が減っていくため、取得した時に全額経費にするのではなく、使用可能期間にわたり減価償却費として分割計上していきます。財務会計において計上した減価償却費が、法人税法における償却限度額を超えた場合、超過分の金額は損金に算入されません。

まとめ

財務会計における費用・経費は、全てを損金算入できるわけではありません。赤字決算であっても法人税を納付する場合があり、その逆もあり得ます。正しい会計処理と適切な節税対策のためにも、税理士等のアドバイスを受けながら、損金について理解しましょう。