法人に関する業務を行う際に「法人番号」の記載を求められることが増えてきました。そもそも法人番号ってなんなのか、どこをみればわかるのか。今回は、法人番号制度の概要や法人番号公表サイトの使い方、法人番号の利活用など、法人番号について解説していきます。
「会社法人等番号」と「法人番号」
法人に付与される番号には12桁の「会社法人等番号」と13桁の「法人番号」があります。
それぞれみていきましょう。
12桁の「会社法人等番号」
「会社法人等番号」とは、商号登記法に基づき登記簿に記録される12桁の番号で、登記事項証明書を取得する際や、商業登記や不動産登記の申請などの手続きに法人を識別するために使用されています。番号の決め方にはルールがあり、法人の場合、最初の4桁は0100~5000までが使用され、登記所コードを示しています。例えば「0100」は東京法務局本局の登記所コードであり、東京法務局本局で設立されたことを意味しています。次の2桁は組織区分です。「01」は株式会社、「02」は特例有限会社、「03」は合名会社・合資会社・合同会社、「05」はその他の法人を示しています。最後の6桁は一連番号で、設立登記の際に登記所で登記記録を起こした順に付与する番号になっています。
13桁の「法人番号」
「法人番号」とは、番号法に基づき、法人に対して国税庁長官が指定する13桁の番号です。1法人に対しひとつの番号が指定され、誰でも自由に利用することができます。
法人番号の構成
13桁の法人番号は、12桁の基礎番号の前に、1桁の検査用数字(チェックデジット(*))を付したものとなります。株式会社など、会社法の規定により設立の登記をした法人(設立登記法人)については、会社法人等番号が基礎番号となります。設立登記法人以外の団体については、国税庁長官が、他のいずれの法人番号の基礎番号や会社法人等番号と重複することのないように12桁の基礎番号を定めます。これらの12桁の基礎番号の前に1桁の検査用数字(チェックデジット)を付した番号を法人番号として指定することになります。なお、一度指定された法人番号を変更することはできません。
*検査用数字(チェックデジット)とは、法人番号をコンピューターに入力するときに誤りのないことを確認することを目的として、基礎番号を基に財務省令で定める算式を用いて算出される1から9までの整数をいいます。
チェックデジットの計算方法
チェックデジットとは番号の「誤読」「誤入力」「偽造」を防止するため、コードに特定のアルゴリズムを適用して計算する数値等をいいます。
会社法人等番号を「700110005901」と仮定した場合のチェックデジットの計算方法は以下のとおりです。
①会社法人等番号の右から数えて偶数桁の数字を合計する
0+5+0+1+0+7=13
②会社法人等番号の右から数えて奇数桁の数字を合計する
1+9+0+0+1+0=11
③ ①の数字×2+②の数字
13×2+11=37
④ ③の数字÷9で計算した際の余りの数字
37÷9=4余り1
⑤ 9-④の余りの数字
9-1=8→チェックデジット
この場合の法人番号は、会社法人等番号「700110005901」の前にチェックデジット「8」を付した「870011005901」となります。
法人番号制度の概要
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(通称マイナンバー法)が平成27年10月5日に施行されたことに伴い、法人に対して法人番号が指定され、平成28年1月から利用が開始されています。
法人番号の指定
法人番号は国税庁長官によって指定されますが、法人番号が指定されるのは以下の法人等になります。
①国の機関
衆議院、参議院、行政機関(内閣府等各省庁)、最高裁判所等
②地方公共団体
都道府県、市町村等
③登記をした法人(設立登記法人)
株式会社、合同会社、一般社団法人、学校法人、非営利活動法人等
④ ①~③以外の法人又は人格のない社団等であって、所定の税法上の届出書を提出することとされている者、または税務書類を提出するなど、一定の要件に該当する者で、国税庁長官に届け出た者
健康保険組合、企業年金基金、マンション管理組合等
法人番号の公表
法人番号を指定した法人等の基本3情報、商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号が、国税庁の法人番号公表サイトにて公表されています。基本3情報以外に、法務局でフリガナを記載した登記申請や申し出を行った場合はフリガナが、英語表記の登録を行った場合は名称、所在地の英語表記が、名称、所在地の変更をしている場合は履歴も公表されています。なお、番号法においては、法人番号の指定を受けた人格のない社団等については、基本3情報を公表することにつきその代表者又は管理人の同意を得なければならないとされています。そのため、公表に同意していない人格のない社団等については、基本3情報は公表されていません。清算の結了等をした場合は、法令に基づき、法人番号、名称、所在地を引き続き公表するほか、清算の結了等の事由が生じた旨と生じた年月日が公表されています。
また、平成30年1月以降、行政機関が法人に関する情報をWEBページ等で公開する場合には、法人番号を併記することが原則とされました。この目的は、法人番号による情報の検索・収集・利用を容易にし、公開情報の利用価値を高めることになります。具体的には、調達、免許・許認可、処分・勧告、補助金交付、リコール届出、求人などに関する情報に法人情報を含む場合には、法人番号を併記することとされています。
法人番号の通知
法人番号の指定後に、法人番号が指定された法人等に法人番号が通知されます。通知書の発送先と発送日の目安は以下のとおりです。
①法人設立ワンストップサービスにより設立登記を行った法人
法人設立ワンストップサービス上に、設立登記完了日の16時又は翌稼働日の11時
②その他の設立登記法人
登記上の本店又は主たる事務所の所在地に、設立登記完了日の2稼働日後
③税務署に所定の税法上の届出書を提出した設立登記のない法人や人格のない社団等
届出書に記載した本店又は主たる事務所の所在地に、税務署に届出書を提出した日から約1か月後
④国税庁に法人番号の指定を受けるための届出書を提出した設立登記のない法人や人格のない社団等
届出書に記載した本店又は主たる事務所の所在地に、届出書が国税庁に届いた日から約1週間後
また、法人番号指定通知書の記載内容は以下のとおりです。
①法人番号
②法人番号の指定を受けた者
・商号又は名称
・本店又は主たる事務所の所在地
・国内における主たる事務所等の所在地(法人番号の指定を受けた者が外国法人の場合のみ記載)
③法人番号指定年月日
国税庁長官が法人番号を指定した年月日
④国税庁法人番号公表サイトの表記
国税庁法人番号公表サイトで公表する場合の表記を記載
規格外の文字等は、利用者が使用するパソコンで入力・表示できないなどの問題があるため、あらかじめ標準水準に置換えられています。
法人番号はいつ使用する?
法人番号は、法人の税務申告や届け出、補助金申請、社会保険手続き等で使用されます。平成30年1月以降は、法人の銀行口座と法人番号を紐づけて管理することが銀行側に義務付けられたため、法人用の銀行口座を作る場合は法人番号の提出が必要となっています。
インボイス制度の登録番号
令和5年10月1日から導入された適格請求書等保存方式(インボイス制度)においては、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等の保存が仕入税額控除の要件となります。この適格請求書には登録番号を記載する必要がありますが、この登録番号は「T+法人番号」で構成されています。
法人番号公表サイトでできること
法人番号公表サイトでは法人番号を公表するだけでなく、いくつかの便利な機能も有しています。
検索
名称、所在地、法人番号などの条件で、法人等の情報を検索することができます。法人番号指定通知書により自社の法人番号は確認できますが、紛失等により法人番号がわからなくなった場合、取引先の法人番号を調べたい場合、法人番号から法人等の情報を調べたい場合などは、この検索機能が有効です。検索により表示されるのは、最新の基本3情報、名称・所在地の変更履歴、表示ページの印刷ボタンです。印刷した書面は、法人番号等の告知の際に提示することができます。
また、ホーム画面右上の「English」リンクをクリックすると、英語版Webページに移動することができるので、英語表記の登録を行った法人等の情報を検索することができます。
Web-API
利用者の保有するシステムから期間や地域などの条件を指定したリクエストを、インターネットを経由して送信することで、その条件に合致する法人等の情報を取得することができます。法人番号を指定した場合は、該当する法人番号に係る情報を1回につき最大10件まで取得することができます。法人名を指定した場合は、該当する法人名に係る情報を取得することができます。取得期間を指定した場合は、該当する期間に①新規に法人番号を取得した法人等、②名称・所在地の変更や登記記録の閉鎖があった法人等の情報を1回につき最大50日分を取得することができます。自社のシステム上で法人等の情報を自動的に取得したい時などに有効な機能です。ただし、利用にあたっては事前に国税庁適格請求書発行事業者公表サイトの「アプリケーションID発行届出仮登録」からアプリケーションIDの発行手続きを行わなければなりません。
ダウンロード
CSV形式・XML形式で、法人等の情報をダウンロードすることができます。ダウンロードには全件データのダウンロードと、差分データのダウンロードがあります。全件データのダウンロードでは、公表している全ての法人等の前月末時点での最新情報を全国分又は都道府県・国外の単位別に取得することができ、差分データのダウンロードでは、①新規に法人番号を指定した法人等②名称・所在地の変更や登記記録の閉鎖があった法人等の情報を、1日単位(日次)で過去40日分まで取得することができます。最新の法人等の情報を一括して取得したい時、日時や都道府県単位の法人等の情報を取得したい時に有効な機能です。
法人番号の利活用
世界最先端IT国家創造宣言(平成28年5月20日閣議決定)では、法人番号の利活用により、国・地方公共団体・民間事業等における情報収集に係るコストの削減や、行政事務の効率化や迅速化を図る取り組みを推進することとされています。
新規営業先等の情報収集
法人番号活用前における新規営業先の把握には、インターネットや登記所、企業データベースからの集計作業が必要であったため、時間や手間、コストがかかっていました。しかし、法人番号公表サイトのダウンロード機能を利用して、法人番号指定年月日で絞り込みを行うことで、新たに法人番号が指定された新規設立法人の抽出が可能となり、新規営業先等の効率的な把握が可能となりました。また、法人所在地で絞り込みを行えば、対象エリアの状況を把握することも可能であり、営業活動に有効な情報を得ることができます。
取引先情報の入力補助
法人番号公表サイトのWeb-API機能やダウンロード機能により取得した情報を活用することで、事務担当者が法人番号を入力するだけで、法人番号から名称・所在地を自動的に補完入力することが可能となります。この機能により、手作業による入力における誤字・脱字、同じ語句に対して異なる表記が混在してしまう表記ゆれ(本町1-1と本町一丁目1番など)等のデメリットが解消でき、入力作業の効率化につながります。
効率的な売掛管理・情報の共有化
法人番号は1法人に対して1番号が指定されるため、売掛金との台帳管理を行う際に、支店等との取引についても本店と同一の法人番号で管理することにより、取引先ごとの集計を効率的に行うことができます。また、各部署で収集・管理してきた情報に法人番号を付すことで、全ての部署で情報を共有することができます。
法人番号公表サイトの利用状況
法人番号公表サイトは、法人番号を検索する場合や業務効率化等を目的に利用されていますが、どの程度利用されているのでしょうか。
法人番号に関する情報
法人番号公表サイトでは法人番号に関する情報を掲載しています。この情報は、月末時点の情報に基づき、翌月10日頃に定期的に更新されています。令和6年4月10日更新された情報によると、法人種別ごとの法人番号指定件数・公表件数は、設立登記法人で5,417,527件になっています。また、令和6年1~3月までの法人番号公表サイトへのアクセス件数は、24,666,056件、検索件数は29,156,813件、ダウンロード件数は98,593件、Web-APIリクエスト件数は118,541,551件となっています。この利用件数からは、法人番号公表サイトが法人番号を検索するだけではなく、業務の効率化等の様々な目的で使用されていることがわかります。法人番号に関する情報は、英語版webページへの月別アクセス件数・検索件数も掲載されています。
まとめ
法人番号は誰でも簡単に確認することができ、法人番号を活用することで多くのメリットを得ることができます。法人番号公表サイトの様々な機能を有効活用して、業務を効率的に行いましょう。