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2024.02.05

最近増えてきている合同会社とは?特徴と設立について解説します!

会社といわれると、株式会社が頭に浮かぶ人がほとんどかと思いますが、近年では設立手続きの手軽さや費用の面でのメリットから、合同会社の設立が増えてきています。今回は、合同会社の特徴と設立について解説していきます。

会社の種類

会社の形態には、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4つがあります。日本の法人形態はほとんどが株式会社であり、令和3年度の国税庁会社標本調査結果によると、法人数2,864,386社のうち、株式会社は2,612,677社で、全体の91.2%を占めています。次いで、合同会社の160,132社(5.6%)、合資会社12,482社(0.4%)、合名会社3,325社(0.1%)となっています。現在でも「有限会社」が存在しますが、2006年の新会社法の施行に伴い、新たに設立することができなくなりました。有限会社は「特例有限会社」という名称の会社形態とされ、株式会社に関する規定が適用されています。

合同会社とは

合同会社は2006年施行の会社法により新しく設けられた会社形態であり、アメリカのLLCLimited Liability Company)をモデルとしています。

所有と経営が一致

株式会社は、株式を発行して資金を集め、その資金で会社を経営していく会社形態です。出資者である株主は、株主総会で取締役を決定し、その取締役に会社経営を委託します。このように、株式会社は所有と経営が分離されています。ただし、株主が役員になることも可能であり、小規模な会社では株主が取締役になる場合も多く見られます。対して合同会社は、出資した人が、そのまま会社経営を行う会社形態であり、所有と経営が一致しています。株式会社における社員は従業員のことを指しますが、合同会社における社員は出資者のことを指しています。

間接有限責任

合同会社に生じる責任は、株式会社と同様に間接有限責任です。間接有限責任とは、会社が借金や負債を負った場合に、出資者は自身の出資額を超えて責任を負う必要はなく、債権者から直接責任を追及されることはありません。合名会社は出資者全員が無限責任となり、会社が債務を支払いきれない場合は、直接債権者に弁済しなければなりません。合資会社は、無限責任と有限責任が混在しています。

1人1議決権

株式会社は、出資額に応じた議決権が与えられますが、合同会社は出資額に関わらず、1人につき1議決権が与えられます。ただし、定款によって付与割合を変更することは可能です。

合同会社設立の流れ

合同会社設立の流れは株式会社とほとんど同じですが、定款認証について違いがあります。

基本事項の決定

まずは、会社の基本事項を決定します。決めるべき事項は、会社名・事業目的・本店所在地・出資金額・発起人・社員などです。

代表者印の作成

会社名が決まったら、代表者印(実印)、銀行印、角印を作成します。代表者印は、印鑑届出書を作成し、登記申請時に法務局へ提出します。会社印は商業登記規則第9条により、1辺の長さが1cm以上3cm以内の正方形に収まるものであることが決められています。

定款の作成

会社設立時には定款の作成が必須です。定款には会社の基本情報や規則が記載されますが、会社法により記載すべき事項は決められています。作成方法には紙と電子定款があり、紙の場合は4万円の収入印紙が必要となりますが、電子定款であれば収入印紙は不要です。また、株式会社の場合は、定款を公証人役場で認証してもらわなければなりませんが、合同会社は必要ありません。

出資金の払込み

定款に定められた出資金額の払込みを行います。法人口座の開設は登記完了後になるため、出資金の払込みは代表社員の個人口座になります。登記申請の際に払込みを証する書類が必要になるので、払い込まれた口座の通帳の表紙、表紙裏(支店名、口座番号、口座名義人が記載されているページ)、振込記録のあるページをコピーしておきます。

法務局での登記申請

本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請します。申請に必要な書類には「合同会社登記申請書」「登録免許税の収入印紙添付台紙」「定款」「代表社員の印鑑証明書」「払込みを証する書面」「印鑑届出書」がありますが、定款の記載内容などにより変わります。
設立登記には登録免許税が必要です。登録免許税は資本金の額の1000分の7の金額と決められていますが、6万円に満たない場合は6万円になります。また、100円未満の端数は切り捨てになります。
会社設立日は登記申請をした日になります。提出書類に不備がなければ1週間前後で登記が完了します。登記完了の連絡はありません。

設立後の届出

登記完了後に次の届出が必要です。

税務署への届出

・法人設立届出書
・青色申告の承認申請書
・給与支払事務所等の開設届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

地方自治体への届出

・法人設立届出書

年金事務所へ社会保険の届出

・新規適用届
・被保険者資格取得届
・被扶養者(異動)届

労働基準監督署への労働保険の届出

・保険関係成立届
・概算保険料申告書

ハローワークへ雇用保険の届出

・適用事業所設置届
・被保険者資格取得届

その他事業の開始にあたり必要な関係各所への許認可の申請等

合同会社設立のメリット

設立費用が抑えられる

合同会社の設立費用は、株式会社の設立費用に比べて安くなっています。株式会社および合同会社ともに、会社設立時に紙で作成する定款について認証印紙代として4万円が必要です(電子定款の場合には印紙代は不要)。さらに、株式会社は公証役場で定款認証手続きが必要なため、資本金の額等に応じて35万円の費用がかかります。対して、合同会社では定款認証手続きが必要ないため、定款認証手数料がかかりません。また、会社設立登記の際に法務局で納付する登録免許税は資本金の額の1,000分の7になりますが、最低でも株式会社は15万円、合同会社は6万円を納付する決まりとなっています。株式会社の設立費用は約22万円からになりますが、合同会社は約10万円からになり、株式会社の半分以下の費用で会社が設立できます。

設立時の定款認証が不要

定款認証は、作成した定款を公証役場にメール等で送付して事前チェックを受け、認証手続きの予約を取り、予約日に発起人の印鑑証明書と身分証明書を用意して公証役場へ出向いて定款を認証してもらう、という一連の手続きがあります。合同会社は設立時におけるこれら一連の公証役場での定款認証手続きが必要ありません。合同会社の場合は、費用が抑えられるだけでなく、認証手続きの手間に時間を取られることもありません。

決算公告義務がない

株式会社は毎年必ず決算公告を行う必要があります。決算公告とは、株主や債権者に向けて、定款に示した方法により財務状況を開示することです。決算公告には、官報に掲載・時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載・電子公告の3つの方法があります。官報の場合は約7万円、日刊新聞紙の場合はさらに高額の費用が必要となり、資料の準備や掲載する手間もかかります。また、自社の財務状況が開示されることにより情報分析がされ、不利益が生じる可能性があるかもしれません。対して、合同会社には決算公告義務がありません。

役員任期の更新なし

株式会社では、取締役の任期は原則2年、監査役は原則4年と決められていますが、非公開会社の場合は定款で定めることにより、最長10年まで延長することができます。役員の任期が終了した場合は、退任・再任のいずれであっても、役員変更の株主総会決議および登記申請が必要です。役員変更登記には、最低でも1万円の登録免許税がかかります。また、変更登記には期限が定められており、株主総会での役員変更決議から2週間以内となっています。変更登記を期間内に実施しなかった場合には、100万円以下の罰金が科される恐れもあります。対して、合同会社では役員の任期が定められていないため、登記にかかる手間と費用を削減することができます。

経営の自由度・意思決定の速さ

株式会社は会社の所有と経営が分離しているため、会社の方針や重要事項を決定するためには、株主総会を開催して議案に対して承認をもらう必要があります。早急に意思決定をしたい場合においても、日程の決定、招集手続、株主への説明資料の作成など、時間と手間がかかってしまいます。対して合同会社は、会社の所有と経営が一致しているため、株主総会のような意思決定の場を設ける必要がなく、迅速な判断が可能となります。

利益の配分が自由

株式会社においては、株主に対する利益配当は出資比率と同じ割合になります。つまり、出資金が多い人ほど多くの利益を受け取ることができる仕組みになっています。対して合同会社では、定款に定めることにより配当比率を変更することができます。合同会社では技術力や会社への貢献度などの出資額以外の要素で、利益配当を決定することができます。

株式会社へ変更できる

設立費用が抑えられるメリット等から合同会社を設立したものの、株式会社で経営することのメリットが大きくなってきた場合は、組織変更手続きにより合同会社から株式会社に変更することができます。変更する場合には債権者保護手続きが必要で時間がかかるため、株式会社への変更にかかる期間は40日程です。合同会社から株式会社に変更する場合の費用は、株式会社の設立登記にかかる登録免許税、合同会社の解散登記にかかる登録免許税、官報公告費用が必要となり、合計約9.5万円です。合同会社設立時に10万円の費用がかかっているので、株式会社に変更するまでの費用は19.5万円です。株式会社の設立費用は、22万円なので、合同会社から株式会社へ変更する方が、費用を抑えることができます。

合同会社設立のデメリット

信用度が劣る

日本の会社の大多数が株式会社であり、比較的新しい会社形態で社会的認知度が低いため、株式会社に比べると信用度が劣っているのが現状です。ただし、最近では「Apple Japan」「Google」「アマゾンジャパン」「西友」などの有名企業も合同会社であり、ユニバーサルスタジオジャパンの運営会社である「ユー・エス・ジェイ」は2018年に株式会社から合同会社に変更しています。徐々に合同会社の知名度や信頼性は上がってきています。

資金調達方法が限定される

株式会社は株式を発行して出資を募り資金調達することができますが、合同会社は株式の発行ができないため、資金調達方法が株式会社に比べて限定されます。合同会社の資金調達方法は、金融機関からの融資や社債の発行などに限られますの、綿密に資金調達方法を模索する必要があります。

出資者同士の意見対立による影響

株式会社の場合は、経営に参加する権利である議決権が持ち株数に応じて与えられるため、経営方針等で意見が食い違った場合でも、最終的には持ち株数の多い人の意見に落ち着きます。合同会社においては、出資金額の大小に関わらず11議決権が与えられるため、意見が対立した場合には、収拾がつかずに経営に支障が出てしまう恐れがあります。そのようなことが起こらないよう、出資金額に応じて議決権を与えるなど、あらかじめ定款に記載して対策を講じておくことも大切です。

株式市場に上場できない

株式市場に上場すると自社株式を証券取引所において自由に売買することができますが、合同会社は株式市場に上場することができないので、上場したい場合には合同会社から株式会社へ会社形態を変更することが必須です。ただし、株式会社に変更してすぐに上場できるわけではなく、準備期間には最短でも3年が必要であり、厳しい基準を満たして審査に合格しなければなりません。

権利譲渡や事業承継がやりにくい

合同会社において、出資者であり経営者でもある社員の地位を譲る場合には、社員全員から同意を得る必要があります。株式会社の場合、株主が亡くなった場合は保有株式を相続することができますが、合同会社の場合は原則としてその地位を相続することができません。また、合同会社の社員は定款の記載事項となっているため、社員が変わる場合は定款変更が必要です。

合同会社に適しているのは

合同会社のメリット・デメリットを解説してきましたが、合同会社に向いているのはどのような会社なのでしょうか。

小規模事業者

合同会社のメリットは迅速な意思決定ができることです。社員数の少ない小規模事業者であれば、株主総会を開くことなく経営者同士の会議だけで重要な経営方針等を決定することができ、合同会社のメリットを最大限に生かすことができます。

顧客が個人である場合

合同会社のデメリットに株式会社に比べて信用度が劣っている点がありますが、顧客が個人である場合、多くの顧客は会社形態など気にせず商品やサービスを重視しているため、このデメリットはほとんど影響がありません。そのため飲食店や美容関連等の一般消費者向けのサービスは、合同会社の設立に向いている業種といえます。

まとめ

合同会社の形態が設けられてから、小規模な事業においても会社が設立しやすくなりました。会社設立といえば株式会社というイメージがありますが、合同会社の社会的認知度も徐々に上がってきています。会社を設立する際は、メリット・デメリットを考慮して、合同会社の設立も検討してみましょう。