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2023.08.23

個人事業主にも税理士は必要?判断するポイントを解説!

個人事業主は、事業に関することすべてを自分で行わなくてはなりません。本来の業務を中心として、営業やお客様対応、日々の記帳や確定申告などの税務まで、業務は多種多様です。会社に比べて規模が小さく、適用される税制上のルールは簡素化されているとはいえ、やはり日々の記帳は面倒なものであり、正しい処理をするためには税制に関する勉強も必要になります。そこで、税理士と契約を結んだ方が良いのかという問題に直面するわけですが、税理士に依頼すべきかどうかを判断するポイントを知っておくと、適切な決定ができるでしょう。

今回は「個人事業主にも税理士は必要かどうか」という観点で、その概要を確認していきましょう。

目次【本記事の内容】

1. 税理士がしてくれること

まずは、具体的に税理士がどのようなことをしてくれるのかを知る必要があります。税理士には、税理士にしか請け負う事のできない業務があります。

記帳代行

日々の収支についての仕訳や帳簿付けなどの作業を、税理士に任せることができます。銀行口座情報や領収書、請求書などの書類を預けることで、その内容に基づき正確に記帳をしてくれます。毎日の業務に追われていると記帳が後回しになり、数か月分をまとめて処理する際には、収支内容を忘れてしまっていることもありえます。こうした記帳を税理士に任せることにより、日々の事務作業量が減り、本来の業務に多くの時間を充てることができます。また、そこから確定申告までまとめて行ってもらえば、一連の税務をスムーズに完了することができます。

確定申告書の作成

個人事業主は毎年確定申告をしなければなりません。一年間の収支を記録して利益を計算し、税額控除などを確認した上で税額を計算する必要があります。しかも、青色申告をしていれば、作成書類の種類も多くなります。事業の内容や規模にもよりますが、収支の内容や適用する控除の種類によっては、どのように計算したら良いか判断しづらいこともあります。しかし、税理士に依頼すれば、1年間の帳簿から適正な会計処理に基づいた利益を計算し、有効な税額控除を適用した確定申告書を作ってくれます。また、提出する確定申告書には、担当した税理士の名前が記入されるので、個人事業主が自分で作成したものよりも、税理士が関わっているということが分かれば信頼性は高まります。税理士が作成する確定申告書は、正確さも保証します。

税務に関する相談

税理士は、事業に関するお金の流れや税制、公的な援助策などの専門知識を持っているので、税金や財務に関するさまざまな相談をすることができます。個人事業主の場合、すべてを自分で考えて判断することになるので、資金繰りや会計処理について疑問や問題が生じた時に、頼れる人がいないと苦労するものです。その点で、税理士はそれぞれの事業内容を把握した上で、事業の安定化に役立つアドバイスをしてくれるので、問題解決に大きく役立つことでしょう。税理士は単に税金についての作業をしてくれるだけの存在ではなく、頼れるビジネスパートナーとなり得ます。

資金調達のサポート

資金繰りに困った時、税理士は事業者にとって最良な資金調達方法を提案してくれます。資金調達には、自治体や政府からの補助金や助成金、金融機関からの融資等がありますが、複数の選択肢の中から、返済計画なども考慮し最も現実的で経営に役立つものは何かを検討するのです。調達方法が決まれば、申請手続きのサポートを行い、実際に資金調達ができる手助けをします。融資でも補助金申請でも、単に所定の用紙を作って提出すれば資金を受けられるという簡単なものではありません。信頼できる個人事業主であり、融資であれば返済できる能力を持っているということを証明する必要があります。そこで、さまざまな資金調達を実現してきた税理士は、培ったスキルを活かして、承認が下りるような方法で申請をします。

2. 個人事業主が税理士と契約するメリット

こうした税理士の業務を考えた時に、個人事業主が依頼した時に得られるメリットはいくつもあることが分かります。自分の状況と照らし合わせて、得られるメリットが事業に役立つかどうかを考えてみると良いでしょう。

正確な会計処理と確定申告ができる

個人事業主が税理士に依頼する大きな理由は、正しい確定申告ができるという点です。個人事業主にとって怖いのは、苦労して行った確定申告にミスや漏れがあって、税務署から修正を迫られることです。何らかの点で指摘を受けて修正を求められると、ほとんどのケースで税額の増加、場合によっては追徴課税などのペナルティーが付きます。追徴課税は税率も高いため、予算外の高額な出費となりうる可能性があります。また、税務署から指摘されたということが知られると、取引先などからの信頼が薄れる原因にもなりかねません。税理士は税のプロであり、ルールに従って正確に記帳し確定申告をするので、こうしたトラブルに見舞われるリスクは大きく減ることになります。

面倒な事務作業を任せられる

常に行うべき記帳や確定申告書の作成などの事務作業は、よほど手慣れた人でない限り面倒で時間がかかるものであり、本来の業務に充てるべき時間が奪われてしまいます。一方で、税理士に記帳代行や確定申告書の作成を依頼すれば、面倒な事務作業をしなくて済むので、本来の業務に集中でき、より効率よく事業を進めていくことができます。そもそも、細かな帳簿付けや計算が苦手という事業主も少なくないので、こうした作業を依頼できるのは精神的にも楽になれるというメリットを生み出します。

安心感を得られる

しっかりと毎日の記帳をして、何回もチェックをした上で確定申告書を作って提出しても、どこかミスが出ているのではないかという不安が付きまとうものです。そして、申告書が受理されたとしても、税務署からの連絡が来ることはないかと不安になることもあります。その点、専門家である税理士に税務代行を依頼していれば、その不安を拭い去り、大きな安心感を得ることができます。また、税務や経営、資金調達に関する疑問が生じた時に、税理士に相談して適切なアドバイスを受けることもできます。困った時に助けてくれるプロがいることは心強いものです。

節税ができる

目に見えるメリットとして大きいのが、節税対策を効果的に行えるという点でしょう。青色申告をしている個人事業主であれば、特別控除などを上手に活用して一定の節税対策を講じているはずです。しかし、経費計上の内容や控除の使い方を始めとする細かな税制上のルールを上手に活用する方法を、税金のプロである税理士が助言してくれることで、より大きな節税が期待できます。節税によって得たお金は、税理士に支払う報酬以上となり、有効な資金活用といえます。また、税のプロがどのようにして節税をしているのかを直接学んで、効率的な経営についてのノウハウを知る機会にもなります。経営者として必要な知識を得られる機会となり、将来にも役立てることができます。

税務調査の立ち会い

企業だけでなく個人事業主であっても、税務調査が入ることがあります。税務調査は会計や税務に関する書類をすべて提出するように求められて、細かな点まで厳しく質問されます。慣れない税務調査に対応するのは、精神的にも大きな負担となります。しかも、税務調査の結果不備を突かれて、ペナルティーを課せられるということもあるのでさらなるダメージとなります。しかし、税理士と契約していれば、税務調査に対応してくれるので安心です。税務調査が入るということを知らせると、打合せや必要書類等の税務調査に向けた事前準備を行い、税務調査当日には同席し、税務署職員にも対応してくれます。心理的ストレスから解放されるだけでなく、納税者側の代理として税務署職員に対応してくれるので、税務署側に有利な判断を避けることもできます。

収支の分析と提案

税理士は毎月の収支を確認しているので、お金のプロとして経営をより安定させるための分析と提案をしやすい立場にいます。顧問契約を結ぶと、定期的に面談が行われてそれぞれの期間における収支状況の分析結果を報告すると共に、危険が見えるようならその状態を伝えたり、より収支バランスを良くするためのアドバイスを提供してくれます。自分では気付かないような問題点を知ったり、事業を拡大させるための方法を教えてもらうことができます。

3. 個人事業主が税理士と契約するデメリット

さまざまなメリットがある一方で、覚えておくべきいくつかのデメリットもあります。メリットとデメリットの両方をバランスよく考えることで、本当に税理士に依頼した方が良いのかを検討することができます。

費用がかかる

当然のことですが、税理士には報酬を支払わなくてはなりません。毎月の顧問契約を結ぶのであれば、月々数万円の支出となることがほとんどです。確定申告だけのスポット依頼であっても、申告内容によって10万円を超えるケースも多々あります。もちろん、記帳などの作業をしない分の人件費の削減や、節税による出費の削減などの効果もあります。しかし、個人事業主の場合は、それほど大きな収入を得ていない場合も多いので、税理士報酬が負担となってしまうこともあります。こうした費用が事業の遂行に支障になることがないか、事前にシミュレーションする必要があります。

お金の流れを自分で把握しなくなることも

プロに記帳や税務申告を任せるのは効率的ですが、事業主自身が全く関わらなくなることは好ましくありません。事業の経営をするものとしては、やはり事業の中でどこからどの程度の収入が発生して、どこでどのくらいの経費が発生しているのかを把握する必要があります。そうしないと、資金面でのリスクが迫っているのにギリギリまで気付けなかったり、事業を無理に広げて失敗しまったりする原因となります。相談をしたり事務作業を任せたりすることはメリットとなる部分ですが、あくまでもバランスを取って自分が関わるべきところは自分で行うという姿勢でいないと、思わぬ失敗に見舞われてしまう可能性もあります。

判断が人任せになる恐れ

また、大事な経営判断を人任せにしてしまうという恐れもあります。もちろん、税理士に資金調達などに関する相談をすることは大事です。しかし、自分の意見がなく、ただ税理士の言うままに行動するというのは危険です。経営者としていろいろな状況を分析して考えることや、何より大事な決断するという行動を自ら放棄してしまっているからです。経営に一貫性がなくなる原因ともなり、経営者としての能力を伸ばすこともできなくなってしまいます。税理士からの提案に耳を傾けることは大事ですが、あくまでも決定するのは自分であるということを強く意識する必要があります。そうすることで、事業を安定させ確実な経営を続けられるようになるはずです。

4. 個人事業主が税理士と契約するかの判断

これまで見てきたようなメリットとデメリットを比べつつ、他の要素も考える必要があります。メリットが大きいとしても、そもそも税理士に依頼する必要がないケースもあるからです。どのような基準で税理士に依頼したら良いかを知っておくことが必要です。

会計ソフトを使って自分でできるか

売上高がそれほど大きくない個人事業主の場合、会計ソフトを使って税務処理を簡単に行うことができます。決まった収支については自動的に登録できたり、銀行口座やクレジットカードの情報を自動的に反映させることもできます。また、確定申告書も控除内容などを入力すれば、自動作成してくれるので難しい知識がなくても作成できます。会計ソフトを使いこなして自分で確定申告ができるのであれば、税理士は不要という判断になりえます。一方で、会計ソフトを使っていても、勘定仕訳の設定や売掛・買掛などの設定は自分でする必要があります。こうした設定や入力の仕方にミスがあったら、いかに会計ソフトであっても不備のある確定申告となってしまいます。会計ソフトで正確な作業を行うには、ある程度の会計に関する知識が必要です。

消費税課税事業者となるか

個人事業主が税理士に依頼するかの大きな分かれ目は、消費税課税事業者の条件である年間売上1,000万円です。消費税の課税事業者となった場合、所得税の他に消費税も申告しなければなりません。しかし、消費税の申告には消費税法の知識が必要であるため、ある程度の勉強も必要となり、申告には大変な手間がかかります。また、売上が1,000万円を超えると、税務調査が入る確率も高くなります。そのため、売上が1,000万円を超える消費税課税事業者となるのであれば、税理士に頼るメリットは大きくなります。

法人成りを目指しているか

個人事業主から法人成りして会社にしたいと思っているのであれば、将来を見据えて税理士と契約するのは良いことです。経営や税務に関するノウハウが吸収でき、本来の業務に集中して利益を出しやすくなるからです。また、税理士事務所によっては法人成りの支援もしてくれるので、スムーズに事業を拡大するための支援を受けられるというメリットもあります。

5. まとめ

事業規模が小さい個人事業主であっても、税理士に依頼するメリットはたくさんあります。本来の業務に集中できることや確定申告を安心して行えることなど様々ですが、費用がかかるなどのデメリットもあります。自分にとっての必要性をよく考えて、税理士のサービスを有効に利用できるかを検討してみましょう。