経営者はさまざまなことを決めなければなりませんが、その一つに税理士の選択があります。税理士は事業に関する会計処理を行ったり、税務や財務に関する相談をしたり、節税対策を行ったりします。会社の経営に大きく関わることもあるので、良い税理士を選ぶことはとても大切です。具体的に、どのようなポイントで税理士を選ぶべきかを理解して、経営をより良い形で進めていけるパートナーとなる税理士を選びましょう。
良い税理士を見つけることの重要性
税理士とは多くの場合顧問契約を結んで長く付き合っていきます。それだけに、信頼でき経営に役立つアドバイスを与えてくれる税理士を選ぶべきです。具体的に、良い税理士を選ぶメリットと、選び方を間違えてしまった時のリスクを確認し、真剣に税理士選びを進めましょう。
自社に合った税理士を選ぶメリット
良い税理士に出会えれば、事業のさまざまな面で効率化が図れます。記帳や税務申告、決算などの作業は依頼してしまえば、本来の業務に集中できるようになります。経営者にとっては、本来の業務に時間を取られることは避けるべきことなので、経営に専念できるというのは大きなメリットです。また、さまざまなリスクや不安を払拭することもできます。経営者にとって、税務調査が入ることや、万が一申告に漏れがあって追徴課税などのペナルティーを受けることは大きな負担となりますが、税理士がいれば、税務調査が入った場合は立ち会ってサポートしてくれます。税務調査以外の毎期の申告においても、申告内容がそのまま受理されるという安心感があれば、余計なストレスを抱えることもなくなります。他にも、節税対策を効果的に行って資金を有効に使えるようにすることも、税理士のサポート業務です。事業をしていると税金の負担が大きくなってくることもあり、場合によっては経営への圧迫になりかねません。プロならではのノウハウを活用した節税をすることで、資金に余裕を持てるようになります。
選び方を間違えるとどうなる?
税理士といっても様々で、自社のニーズに合わないこともあります。例えば、記帳などの事務的な作業はしてくれるものの、経営や財務に関する有用なアドバイスがなく、プロのメリットを活かせていないこともよくあるケースです。また、すぐに会計処理や税務に関する疑問を晴らしたいのに、回答が遅いため、不安な時間を過ごしてしまう羽目になるかもしれません。このように、コミュニケーションがうまく取れないために、顧問契約を解除するという事態に陥ることもあります。
税理士の選び方
税理士選びに失敗しないためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。単に能力があるというだけでなく、長く付き合っていくビジネスパートナーとして、コミュニケーションがうまく取れるかという観点も大切です。
法令を守るのが大前提
法律や各種ルール、倫理的なポイントを守る税理士ということは大前提です。たとえば、こんな方法を採ると大きく節税できるものの、税務署に知られると問題になる恐れがあるといった提案をしてくる税理士は避けるべきです。また、法律上は提出しなければならない書類がある、しなければならない作業があるものの、ほとんどチェックされないので作業効率のためにカットするといった税理士も危険です。一見すると、こうした提案は会社の利益を出しやすいようにも見えます。しかし、問題が発覚した場合のリスクが非常に大きく、倫理的にも受け入れられるものではありません。ルールを確実に守った上での有用なアドバイスをくれる税理士を選ぶことが大切です。
フィーリングを大事にする
税理士の実績や能力は大事ですが、その税理士と話してみてフィーリングが合うかという点も重視しましょう。経営や資金繰りについて検討し、アドバイスをもらう相手になるので、気軽に相談できる関係性を持ち、円滑なコミュニケーションが取れる相手でないとうまくいきません。また、重要機密である事業の収支内容をすべて提示する相手になるので、信頼できる人や事務所であることは必須条件です。税理士は経営者にとって重要度の高いビジネスパートナーの一人なので、単に優秀だというだけでなく、良い付き合いができるかという観点からの判断も必要です。
料金の分かりやすさ
税理士報酬はある程度の相場が存在するものの、事務所や業務内容、企業規模などによって大きく変わります。顧問契約の場合定期的に発生するものなので、トータルで考えると決して安くない金額となります。収支を安定させるために依頼するのが税理士ですが、その報酬が負担となるような事態は避けたいものです。顧問料と業務範囲を確認し、場合によっては実際に契約する前に見積書を入手して、その内訳も説明してもらってから、契約について検討していくことも大切になります。
最新の情報を持っているか
税制や現場での適用ルール、課税庁の傾向といったものは年々変わります。最新情報に通じていれば、より効果的な節税ができますが、税制改正などを知らない場合は、法令違反を犯してしまうリスクがあります。それだけに、最新情報に通じている税理士であるかというのは外せない条件です。一般的な税制改正に関する知識だけでなく、会計処理や財務分析、決算処理などについての作業をIT化しているのかという点も確認したいところです。最新のやり方に沿って処理をしていける税理士であれば、より効率よく記帳や申告、収支分析などを行ってくれるので経営に大きく役立つことになるでしょう。企業がIT化を強く進めている現状において、同じように税理士もさまざまな業務をIT化していないと、企業の最新事情に付いていけない可能性もあるので、確認しておきたいポイントです。
業界に通じているか
日々の記帳や税額控除の適用などの税務申告は、業界ごとの特徴やルールが存在します。また、資金調達に使える補助金や助成金、特別な控除制度などにおいても、業界によって違いがあります。そのため、たとえ優秀な税理士であっても、全く携わったことがない業界においては、その能力を発揮できないこともありえます。こうしたことから、自分たちが属している業界に通じた税理士で、今までに同業者の税務に関わってきたかということも注目すべきポイントです。業界のことをよく知っていれば、資金の流れなどを把握してもらいやすく、面談時に専門用語などを使っても、問題なくコミュニケーションを取ることができるでしょう。
経営についてのノウハウがあるか
お金のプロである税理士には、資産運用や資金調達、法人としての手続きなどに関する相談をすることが多くなります。そのため、単に記帳代行をスムーズに行ってくれる、決算業務を一任できるというだけでなく、経営についてのノウハウがあり、的確なアドバイスを与えてくれるかという観点も重要となります。資金調達を公共機関や金融機関から行う際には、経営計画を作って提出する必要があります。その際に、どのようなプランニングをすると融資を受けやすいのかなど、税理士のアドバイスを得られることは大きな利点です。そのためには、税理士にも経営についての知識や実際的なノウハウが必要です。
節税対策に通じているか
税理士のサポートを受ける大きなメリットの一つは、自分ではできないような効果の出る節税対策を提案してもらえることです。節税方法は企業規模や業界など、それぞれの企業によって変わってきます。それだけに、誰でも分かるような一般的な提案ではなく、自社の業務内容を理解した上で具体的かつ意味のある節税方法を提案してくれる税理士かどうかを見極めたいところです。
相談に親身に乗ってくれるか
税理士は単なる税務作業の代行業者ではなく、経営に関わる良きビジネスパートナーとなるべきです。そのため、親身になって相談に乗ってくれるかを見ることは大切です。上から目線でアドバイスを与えるだけであったり、通り一遍の報告しかしてこなかったりする税理士とはうまくいかないこともありえます。税務や資金調達、経営などについて悩んでいることを話す時に、しっかりと聞いてくれて、事情に合った提案をしてくれるかを判断したいところです。実際に契約をする前に無料相談を受け付けている事務所が多いので、こうした機会を使って相談しやすい人かどうかを確認しましょう。
資金調達に関する実績
税理士から与えられるサポートの一つには、資金繰りの支援があります。自社の状況に見合った資金調達の方法として、銀行からの融資や公的な補助金、助成金の利用のどれが良いのかを提案してくれます。その上で、融資を引き出すための書類の作り方や面談の準備などをして、スムーズに資金調達ができるよう支援します。こうした支援をするには、机上の知識だけではうまく行かず、実際の経験と慣れが求められます。それだけに、資金調達に関する実績が豊富かどうかをチェックしておくことは大切です。特に、自分たちと同じくらいの企業規模や業界における資金調達を成功してきたかを確認することで、自社にとっての有効性を判断できるポイントになります。
対応の速さ
通常、税理士とのやり取りは月一回の面談の時など、決まったタイミングで行います。しかし、面談以外で相談や業務の依頼をした場合、すぐに対応してくれるかどうかは重要なポイントです。レスポンスが遅ければ、重要な経営判断に支障をきたす恐れもあります。また、判断がつきかねる案件であっても、まずは調べて折り返す旨の一報を入れておくことで、経営者の不安を軽減させることに繋がります。経営者が不安にならないよう配慮した対応の速さは必要不可欠です。
事務処理能力の高さ
日々の会計処理や決算業務、申告などでは正確さが求められます。また、膨大な項目を処理する必要があるので、処理スピードも必要となります。スムーズに記帳を行っていき、早めに決算を完了し申告をするためには高い事務処理能力が求められます。効率的な会計システムを持っているか、スタッフの数を十分に揃えているか、ミスがないように誠実に仕事をしているかなどの要素が関係しています。
具体的な税理士の探し方
上記のポイントを確認し、自社にとって良い税理士を見つけるためには、複数の事務所の選択肢を持っていることが望ましいです。選択肢が多ければ、より優れていて自分たちに合う事務所を選ぶことができます。そのための具体的な方法を知っておけば、税理士選びは楽になります。
紹介を受ける
実際に税理士との顧問契約を結んだ事業主に聞いてみると、多くは誰かからの紹介によって事務所を決めています。同業者や取引先、知人からの紹介、もしくは別件で依頼したことがある士業からの紹介といった形です。知り合いからの紹介は、実際に依頼してみてどうだったのか、税理士としての能力や人柄がどうなのかといった大事な点を把握しやすくなります。そのため、まずは周りから税理士に関する情報を集めて、自社に合った事務所を探してみると良いでしょう。
インターネットで探す
インターネットには、いくつもの税理士紹介サイトがあります。こうしたサイトでは、それぞれの事務所の特徴や得意分野、実績、評判などの情報を詳細に掲載しています。多数の事務所が紹介されていますので、比較しながら選べるのがメリットです。また、対面での面談ではなくオンライン面談でも構わないと考えているのであれば、地域という制限がなく、全国の税理士の中から選べるという利点もあります。
税理士と契約する際の注意点
良い税理士を見つけたと思う場合にも、いくつかの注意点があります。契約する際にはこうした点を考慮しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれることがあるので、慎重に判断しましょう。
契約するタイミングを考える
一般的に税理士の繁忙期は11~5月といわれています。繁忙期には、新規依頼の受付ができなかったり、対応が遅くなったりすることがあります。そのため、税理士について十分に理解することができなかったり、手続も順調に進まない可能性もあります。こうしたことを避けるためにも、税理士の繁忙期を避けて契約をすると良いでしょう。また、税理士を変更する場合には、業務が一区切りとなる法人税の申告直後も良いタイミングです。
変更の場合は引き継ぎをスムーズに行う
税理士を変更する場合は、新旧の事務所で引継ぎができるようにしておく必要があります。変更前の事務所から必要書類や会計データを回収し、新しい事務所に引き継ぎます。税理士によっては契約解除を快く思わず、資料回収に協力的でない場合もあるようです。解約する際には丁寧な対応で、円滑な引継が行われることが望まれます。
まとめ
経営者にとって税理士は、大事な経営情報を預けることや資金調達などの経営に大きく関わるアドバイスをしてくれる存在です。それだけに、しっかりと検討して選ぶ必要があります。その選び方としては、能力や実績があるということに加えて、相性が良く円滑にコミュニケーションが取れるかという点も大事です。長く付き合っていくビジネスパートナーとなるので、さまざまな面を考慮してより良い税理士を見つけられるようにしましょう。