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2022.02.01

間違いやすい不動産貸付けにおける青色申告特別控除額(65万円、55万円、10万円の控除額の仕組み)

最近は不労所得の一つの手法として不動産オーナーとなってその不動産を賃貸される方もかなり多くなってきました。不動産貸付けの開始に伴い税務署へ開業届を提出、合わせて青色申告の届出を出される方も多いかと思います。青色申告は様々な税務メリットがありますが、その一つに青色申告特別控除があり、この特別控除のメリットを享受するために青色申告承認申請書を提出される方も多数いらっしゃいます。ただこの青色申告特別控除、実は不動産所得の計算における控除額には3つがあるのをご存じでしたでしょうか。今回のテーマは不動産の貸付けにおける所得の計算上控除することができる青色申告特別控除の制度の概要をお話したいと思います。

青色申告特別控除額65万円(55万円)を受けるのに必要な要件(事業的規模)

青色申告特別控除65万円(55万円)を利用するにはその経営する不動産賃貸業が「事業的規模」である必要があるのです。実は事業の規模が事業的規模以外になると青色特別控除額は10万円となります。青色申告承認申請書を提出すれば、不動産所得の計算上、全てのケースで65万円(55万円)の特別控除を得られると勘違いされている方が非常に多いので注意が必要です。それではこの「事業的規模」とはどのようなケースなのでしょうか。

事業的規模とは

その経営する不動産賃貸が事業として行われているかどうかについては、社会通念上事業と称する程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断されます。

事業的規模の具体的な判断目安

事業的規模が実質的に判断されるとしても、結局のところそれがどの程度なのか、全く分かりませんよね。
そこで、例えば建物の貸付けについては、次のいずれかに該当すれば原則として事業として行われているものとして取り扱われます。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
また、駐車場経営の場合には次の場合に該当すれば事業的規模として考えることができるとされています。
(3) 駐車場の貸付けについては、おおむね50台分以上であること
これらは組み合わせ可能で、貸家1棟=貸室2室=駐車場10台分 として換算することができます。例えば貸家3棟とマンション2室と駐車場10台分でこれら不動産所得は事業的規模として計算することができます。

青色特別控除額55万円を受けるための要件

不動産の貸付けが事業として行われているとされた場合に、青色申告特別控除額55万円を受けるには更に次のことが必要になります。
(1) 不動産所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
(2) (1)の記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること。

青色特別控除額65万円を受けるための要件

特別控除額55万円ではなく、65万円の控除額を受けるには上記の「55万円の青色申告特別控除」の要件に該当していることに加えて次のいずれかに該当していることが必要です。
イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること。
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

まとめ

不動産所得における青色特別控除額には3つの控除額があり、特に大きな控除額を受けようとすると経理の知識が必須になってきます。誤った控除額に基づき所得を計算し、後々に過去の所得計算の修正となると手続的な煩雑さのみならず、延滞税や加算税の支払いによる経済的な痛手も負ってしまいます。事業主としてはそのようなことがないよう事前に入念な準備をして確定申告をしていければ後々も安心です。