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2026.01.15

新しい挑戦を志す皆様へ!初めての資金調達:日本政策金融公庫の活用方法/創業融資ガイド

「いつかは自分の事業を持ちたい」「温めてきたビジネスアイデアを形にしたい」そう考え、起業や独立を具体的に検討し始めたとき、多くの方が最初に直面するのが資金調達という現実的な課題です。

「良いサービスには自信があるが、開業資金が足りない」

「仕入れや広告に先行投資したいが、自己資金だけでは不安が残る」

「創業融資を断られたら、事業そのものを否定された気がしてしまいそうだ」

このような不安を抱えたまま、立ち止まってしまう方も少なくありません。

しかし、創業時の資金調達、とりわけ 日本政策金融公庫の創業融資 には、事前に知っておくことで結果が大きく変わる「考え方」と「準備のポイント」があります。創業融資は、単にお金を借りるための手続きではなく、事業内容や資金計画を整理し、第三者に「この事業は継続できる」と示すための重要なプロセスでもあります。

本記事では、これまで多くの創業者を支援してきた税理士の視点から、創業融資を検討する際に必ず押さえておきたい4つのポイント(審査・申込時期・自己資金・必要書類)について、実務的に分かりやすく解説します。

「自己資金が少ないから無理だろう」と諦める前に、「いつ、何から準備すればよいのか分からない」と悩む前に、ぜひ最後まで読み進めてみてください。本記事が、あなたの創業を現実へと近づけるための一助となれば幸いです。

創業融資とは?日本政策金融公庫が行う創業者向け融資制度

創業融資とは、これから事業を始める方や、創業して間もない事業者を対象とした融資制度です。中でも、日本政策金融公庫の創業融資は、実績が少ない創業期でも利用しやすい公的融資として、多くの起業家に活用されています。本章では、「創業融資とは何か」という基本から、日本政策金融公庫が果たす役割について、初めての方にも分かりやすく解説します。

創業融資とは

創業融資とは、これから事業を始める方や、創業間もない事業者が事業開始に必要な資金を調達するための公的な融資制度です。事業開始前から税務申告を2期終えていない期間(一般に創業から概ね数年以内)を対象としており、営業実績が十分でない創業初期の段階でも資金調達の助けとなる仕組みとして位置づけられています。こうした創業期の資金ニーズに対応するため、日本政策金融公庫では、民間金融機関だけでは対応が難しい創業者を積極的に支援するための融資制度を設けています。

日本政策金融公庫は政府100%出資の政策金融機関です。銀行等の民間金融機関の補完を目的としており、特に中小企業や小規模事業者、起業を目指す個人・法人に対して、公的な役割として長期・低利の融資を行う金融機関です。創業融資はその代表的な支援策として広く活用されています。

創業融資を検討する際、多くの方が気になるのが「担保や保証人は必要なのか」という点です。日本政策金融公庫の創業融資には、一定の要件を満たす場合には、代表者保証や担保を求められないケースもあります。本章では、日本政策金融公庫の創業融資の特徴や、民間金融機関との違いを踏まえながら、創業者にとってのメリットを整理します。

創業融資の特徴

創業融資の大きな特徴として、一定の条件を満たす場合には「無担保・無保証人で借入できる点」が挙げられます。創業前または創業間もない方は、担保や保証人を付けずに融資を受けられることが可能であり、一般に金融機関からの融資が受けにくい創業期の事業者にとって大きなメリットとなっています。

また、創業者向けの融資には通常より低い金利が適用される制度もあり、利率の引き下げ措置が設けられている場合もあります。これにより資金負担を軽減し、創業初期の不確実性を下支えする仕組みになっています。

融資の対象となる資金用途は、事業開始に必要な設備資金や運転資金です。具体的には、店舗や事務所の賃貸契約費・内装工事費、機器設備の購入費、広告宣伝費、人件費・仕入資金など、創業に伴って発生する種々の費用が含まれます。計画的に資金計画を立てることが融資審査の重要なポイントになります。

利用の流れ

創業融資を申し込む際は、まず自身の事業計画をまとめた「創業計画書」を作成する必要があります。創業計画書は事業の目的・ビジョン、収支計画、必要資金の内訳、返済計画などを記載するもので、審査の中心となる書類です。日本政策金融公庫の公式サイトでは創業計画書のひな型や記入例も提供されており、初めての方でも作成しやすくなっています。

その後、事前相談や窓口・オンラインでの申し込みを経て、融資審査が行われます。審査においては事業計画の実現性、返済能力、事業者の経験・意欲などが総合的に評価されます。条件を満たせば融資が実行され、契約手続き完了後に資金が指定口座へ送金されます。返済は原則として月賦払いで、返済期間や方法(元利均等返済等)は融資内容に応じて設定されます。

創業融資の意義

創業融資は、起業家や創業者が金融機関からの資金調達でつまずきやすい創業初期の壁を越えるための重要な支援制度です。実際に多くの創業者が日本政策金融公庫の創業融資を活用して事業をスタートさせており、平均貸付額や貸付件数も一定規模に達しています。こうした制度を理解し、適切に活用することは、創業を成功させるための大きな一助となるでしょう。

創業融資の審査ポイント:日本政策金融公庫が重視する5つの視点

「創業融資は審査が厳しいのか」「どこを見られるのか」という不安を持つ方は少なくありません。日本政策金融公庫の創業融資では、過去の実績がないことを前提に、事業計画や創業者本人の状況を総合的に審査します。本章では、創業融資の審査において、日本政策金融公庫が特に重視しているポイントを、実務的な視点から解説します。

創業計画書の内容と整合性

審査において最も重視されるのが創業計画書です。事業内容、商品・サービスの特徴、ターゲット顧客、売上の見込み、必要資金の内訳、返済計画などが、論理的かつ現実的に説明されているかが確認されます。

特に、売上計画が根拠のない楽観的な数字になっていないか、経費や生活費を踏まえた資金繰りになっているかといった点は厳しく見られます。「なぜこの売上が見込めるのか」「なぜこの金額が必要なのか」を説明できることが重要です。

創業者本人の経験・経歴

創業者自身のこれまでの職務経験やスキルも、審査上の大きなポイントです。

これから始める事業と、過去の勤務経験や資格、実務実績にどのような関連性があるかが問われます。同業種での勤務経験がある場合は評価されやすく、未経験分野での創業の場合には、なぜその事業ができるのか、どのように知識やノウハウを補うのかを明確に説明する必要があります。

自己資金の有無と形成過程

創業融資では、自己資金の金額だけでなく、その「貯め方」も重視されます。

コツコツと蓄積された預金であるか、直前に不自然な入金がないかなど、場合によっては過去の通帳の履歴を通じて確認されます。自己資金は「事業への本気度」や「計画性」を示す重要な指標であり、一定の自己資金があることは審査上プラスに働きます。

資金使途の明確性

借入金の使い道が明確で、事業に直接必要なものに限定されているかも重要です。

設備資金と運転資金の区分が整理されているか、金額が過大でないか、私的な支出が含まれていないかといった点が確認されます。資金使途が曖昧な場合、計画全体の信頼性が下がることになります。

返済可能性と生活設計

創業融資は「返済が前提」の融資です。

事業から得られる利益で返済が可能か、創業当初の生活費をどのように確保するのかなど、現実的な返済計画が立てられているかが見られます。返済額が事業規模に比して過大でないか、資金繰りに無理がないかが審査のポイントとなります。

創業融資はいつ申し込む?申込時期と融資実行までのスケジュール感

創業融資は、「いつ申し込むか」によって結果や使い勝手が大きく変わります。資金が不足してから慌てて申し込むのでは、事業計画やスケジュールに無理が生じがちです。本章では、日本政策金融公庫の創業融資を想定し、申込みに適した時期や、融資実行までのおおよそのスケジュール感について解説します。

申込のベストな時期は「開業前〜開業直後」

創業融資は、開業前、または開業後間もない時期に申し込むのが基本です。

店舗契約前や設備投資前など、これから資金が必要になる段階での申込みが最も望ましいとされています。すでに多額の支出を自己資金で行ってしまった後では、資金使途の説明が難しくなったり、追加の融資が受けにくくなることがあります。

また、開業後しばらく経過し、売上が立たない期間が長くなると、資金繰りや返済能力に対する懸念が生じ、審査上不利になる場合もあります。そのため、「開業前から開業後数か月以内」が、創業融資の活用に最も適したタイミングといえます。

申込みから融資実行までの目安期間

日本政策金融公庫の創業融資では、申込みから融資実行まで1か月~1.5か月程度を見込んでおくのが一般的です。

ただし、これはあくまで目安であり、以下のような要因によって前後します。

・創業計画書の完成度

・提出書類の不備の有無

・面談日程の調整状況

・繁忙期(年度末など)

特に、書類の準備が整っていない場合や、計画内容の修正が必要となった場合には、1か月を優に超えることもあります。開業日や支払予定日が決まっている場合には、余裕を持って1.52か月前から準備を開始することが現実的です。

開業スケジュールとの関係

創業融資は、開業スケジュールと密接に関係します。

例えば、店舗の賃貸契約、内装工事、設備購入、人材採用などは、融資実行のタイミングを考慮しながら進める必要があります。融資実行前に契約や支払いを完了してしまうと、「融資対象外」と判断される可能性がある点には注意が必要です。

そのため、事業計画の段階で

・いつ、何に、いくら資金が必要か

・融資が実行される想定時期

を明確にし、開業準備のスケジュールを組み立てることが重要です。

法人設立・開業届とのタイミング

法人の場合、法人設立前でも創業融資の相談・申込みは可能ですが、実際の融資実行は、原則として法人設立後になります。個人事業主の場合も、開業届提出前後で申込みは可能です。

いずれの場合も、設立日や開業日を基準に、融資のタイミングが前後しすぎないよう調整することがポイントです。

スケジュール管理が重要な理由

創業期は、資金不足がそのまま事業リスクに直結します。

融資が間に合わないことで、開業時期の延期や、十分な準備ができないまま事業を始めてしまうケースも少なくありません。創業融資は「資金が尽きてから申込むもの」ではなく、事業開始を円滑に進めるための事前準備の一環として位置づけるべきものです。

創業融資における自己資金の考え方|金額・目安・見られるポイント

創業融資において「自己資金はいくら必要か」という質問は非常に多く寄せられます。日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金の金額だけでなく、その内容や形成過程も審査の対象となります。本章では、創業融資における自己資金の基本的な考え方や、審査でどのような点が見られているのかを整理します。

自己資金とは何を指すのか

創業融資における自己資金とは、創業者自身が事業のために用意した返済不要の資金を指します。具体的には、預貯金として保有している現金が中心となりますが、事業に充てることが明確な手元資金であることが前提です。

一方、親族や知人からの借入金、カードローンなどは、返済義務があるため、原則として自己資金とはみなされません。

自己資金が重視される理由

日本政策金融公庫が自己資金を重視する理由は、大きく分けて二つあります。

一つは、事業に対する本気度や計画性の確認です。長期間にわたってコツコツと資金を準備してきたかどうかは、創業に対する姿勢を測る指標となります。

もう一つは、創業初期の資金耐久力です。創業当初は売上が安定しないことが多く、想定外の支出が発生することもあります。自己資金が一定程度あれば、そうした局面でも事業を継続できる余力があると判断されます。

金額の目安と考え方

一般的には、「創業に必要な資金のうち、一定割合を自己資金で賄えているか」という観点で見られます。

実務上の目安としては、必要資金の23割程度を自己資金として用意できているか、または 100万円前後の自己資金が確認できるかが、一つの判断材料になるケースが多いです。

例えば、創業に必要な資金が300万円の場合、全額を融資に頼るのではなく、60万円~100万円程度を自己資金として負担している方が、計画の現実性が高いと評価されやすくなります。

もっとも、自己資金が多ければ必ず融資が通るというものではなく、事業内容や収支計画、返済計画とのバランスが重要である点には注意が必要です。

形成過程が重視される点に注意

自己資金については、「いつ、どのように貯めた資金か」も確認されます。

場合によっては、過去の通帳の履歴を通じて、毎月の給与から積み立ててきたものか、開業直前に不自然な入金がないかといった点がチェックされます。短期間に多額の入金がある場合、その資金の出所について説明を求められることがあります。贈与である場合は贈与契約書の提出が必要になることもあり、借入金であれば自己資金として評価されにくくなります。

すでに使ってしまった自己資金の扱い

開業準備のために、すでに自己資金を一部支出しているケースも少なくありません。

この場合でも、事業に必要な支出であることが明確で、領収書等の証憑が残っていれば、実質的に自己資金として評価されることもありますが、融資に反映されない場合もあります。ただし、私的支出と区別できないものや、説明が困難な支出については評価されない可能性があるため注意が必要です。

創業融資の必要書類一覧:申込み前に準備しておくべき資料

創業融資をスムーズに進めるためには、事前に必要書類を把握し、計画的に準備することが欠かせません。日本政策金融公庫の創業融資では、決算書の代わりに、事業計画や資金状況を示す書類が中心となります。本章では、創業融資の申込みにあたって必要となる主な書類について、概要を解説します。

創業融資の申込みに必要な主な書類

創業融資を申し込む際には、事業内容や資金計画、申込者本人の状況を確認するために、いくつかの書類提出が求められます。日本政策金融公庫の創業融資では、過去の決算書がないことを前提としているため、事業計画に関する書類と本人確認・資金状況を示す書類が中心となります。

① 創業計画書

創業融資において最も重要な書類が創業計画書です。

事業の概要、開業の動機、商品・サービスの内容、取引先や販売方法、売上・利益の見込み、必要資金の内訳、返済計画などを記載します。日本政策金融公庫の所定様式が用意されており、この内容が審査の中心資料となります。

② 資金計画・収支見込に関する資料

創業計画書とあわせて、開業時に必要な資金の内訳や、開業後の収支見込みを補足する資料の提出を求められることがあります。

設備資金と運転資金の区分が明確になっていること、売上や経費の見込みに合理性があることが重要です。

③ 自己資金を確認できる資料

自己資金の状況を確認するため、預金通帳の写しなどの提出が求められます。

通帳の残高だけでなく、一定期間の入出金履歴を通じて、自己資金の形成過程が確認されます。不自然な入金がある場合には、その内容について説明を求められることがあります。

④ 本人確認書類・経歴に関する資料

申込者本人の確認のため、運転免許証やマイナンバーカード等の本人確認書類を提出します。

また、これまでの職務経歴や保有資格が事業内容と関係する場合には、職務経歴書や資格証明書の提出を求められることもあります。

⑤ 法人・開業に関する書類

法人の場合は、履歴事項全部証明書や定款の写しなどが必要となります。

個人事業主の場合は、開業届の写しが求められることがあります。なお、開業前であっても申込み自体は可能ですが、融資実行時にはこれらの書類が必要となるのが一般的です

まとめ

創業融資は、これから事業を始める方にとって非常に心強い資金調達手段です。一方で、「公的融資だから通りやすい」「申し込めば何とかなる」といった誤解を持ったまま臨んでしまうと、思うような結果が得られないケースも少なくありません。

日本政策金融公庫の創業融資は、過去の実績ではなく、創業計画の内容、創業者本人の経験や姿勢、資金計画の妥当性を総合的に見て判断されます。審査では、事業が継続できるか、そして借入金を無理なく返済できるかという点が、一貫して確認されています。

そのため、創業融資を成功させるためには、

・現実的で根拠のある創業計画を立てること

・自己資金の状況を整理し、事業への本気度を示すこと

・開業スケジュールと融資実行のタイミングを適切に管理すること

・必要書類を早めに把握し、整合性のある形で準備すること

が重要になります。

創業期は、事業の準備、営業活動、各種手続きなど、やるべきことが一気に押し寄せる時期です。その中で資金面の不安を抱えたまま進めてしまうと、本来集中すべき事業そのものに支障が出てしまうこともあります。創業融資は、単なる「お金を借りる手段」ではなく、事業計画を見直し、創業を成功に近づけるための重要なプロセスと捉えることが大切です。

税理士は、数字の作成だけでなく、事業計画の整理、資金計画や返済計画の妥当性の確認、金融機関とのやり取りを見据えた準備など、創業融資の各段階でサポートできる専門家です。創業を検討している段階から相談することで、無理のない資金調達と、安定したスタートを切ることが可能になります。

これから創業を予定している方、創業間もない方は、ぜひ一度、創業融資を「早めに・正しく」検討してみてください。計画的な準備が、事業の将来を大きく左右する第一歩となるはずです。

お読みいただきありがとうございました。