確定申告の時期になると「確定申告は3月15日まで!」と、いろいろな場面で耳にします。所得税だけでなく、その他の税金についても申告期限が定められています。今回は各種税金の申告期限と、期限後申告になった場合や納税が遅れた場合のペナルティ等について解説します。
法人税の申告
法人税の申告期限
法人税の申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2カ月以内です。申告期限が、土曜日・日曜日・祝日など場合は、その翌日が申告期限となりますが、これは他の国税についても同様です。法人税の納付についても、申告期限と同様に事業年度終了の日の翌日から2カ月以内です。
延長できる場合
法人税の申告・納付期限は、前述のとおり事業年度終了の日から2カ月以内ですが、以下に該当する場合は延長することができます。
(1)定款の定め等による申告期限の延長の特例
定時株主総会の開催が毎事業年度の終了の翌日から3カ月以内と定款等に定められている場合や、会計監査人の監査を受けなければならない場合など特別な事業があり申告期限までに決算が確定しない法人は、納税地の所轄税務署長に「定款等の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」を提出することにより、申告期限を1カ月延長することができます。申請書は、適用を受けようとする事業年度終了の日までに提出しなければなりません。
ただし、申告期限が延長された場合であっても、納付期限は延長されないので注意が必要です。納付期限の翌日から納付日までの期間に対しては利子税が課税され、令和4年1月1日以降の利子税の税率は0.9%です。利子税が課税されないためには、納付期限までに概算で法人税額を算出して見込納付を行っておき、実際の納税額が確定した際に差額を納付または還付の手続を行います。利子税については、損金算入することができます。
(2)災害その他やむを得ない理由による申告期限の延長の申請
災害その他やむを得ない理由によって決算が確定しないため、確定申告書を申告期限までに提出できないときも、申告期限を延長することが可能です。災害その他やむを得ない理由とは以下のような場合が該当します。
・地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象異変による災害
・火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通途絶その他の人為による異常な災害
・申告等をする者の重傷病、申告等に用いる電子情報処理組織で国税庁が運用するものの期限間際の使用不能その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実
災害その他やむを得ない理由においては、地域指定・対象者指定・個別指定の3つに分けられます。
①地域指定
自然災害など、納税者の責めに帰さないやむを得ない理由により、その申告・納付等をすることができない者が都道府県の全部または一部の地域にわたり広範囲に生じたと認められる場合に、国税庁長官が、地域および期日を指定して、その申告・納付等の期限を延長するものです。これにより、指定された地域内に納税地のある納税者については、期限延長の申請手続を特別にすることなく、申告・納付等の期限が延長されます。
地域および期日の指定は、指定され次第、官報に掲載されることになります。
②対象者指定
申告等に用いる国税庁の運用するシステムが、申告・納付等の期限間際に使用不能であるなど納税者の責めに帰さないやむを得ない事実により、その申告・納付等をすることができない者が多数に上ると認められる場合に、国税庁長官が、その対象者の範囲および期日を指定して、申告・納付等の期限を延長するものです。これにより、指定された範囲に該当する者については、期限延長の申請手続を特別にすることなく、申告・納付等の期限が延長されます。
対象者の範囲および期日の指定は、指定され次第、官報に掲載されることになります。
③個別指定
上記指定のない場合で、災害その他やむを得ない理由によって期限までに申告・納税ができないときは、納税地の所轄税務署長に「申告期限の延長申請書」を提出・申請することにより、その理由がやんだ日から2カ月以内に限り、申告・納付等の期限が延長されます。
法人の消費税の申告
消費税の申告期限
法人における消費税の確定申告期限は、課税期間終了の日の翌日から2カ月以内です。
延長できる場合
法人税の申告期限の延長の特例を受けている法人については、「消費税申告期限延長届出書」を納税地の所轄税務署長に提出することにより、申告期限を1カ月延長することができます。届出書の提出期限は、適用を受けようとする事業年度終了の日までとなります。法人税と同様に納付期限は延長されないので、見込納付をすることで利子税を回避することができます。
課税期間の短縮をしている場合
課税期間を1カ月または3カ月に短縮している場合の申告期限は、短縮した各課税期間終了の日の翌日から2カ月以内となります。なお、消費税の申告期限の延長を受けている法人について、申告期限の延長が認められるのは、事業年度終了の日の属する課税期間のみになります。3月決算法人で課税期間を3カ月に短縮している場合は、4~6月、7~9月、10~12月の課税期間における申告書の提出期限は、各課税期間終了の日の翌日から2カ月以内となり、1~3月分についてのみ1カ月延長され6月30日が申告期限となります。
個人の申告
所得税の申告期限
所得税の申告書の提出期限は、翌年3月15日です。所得税においても、法人税と同様にやむを得ない事情がある場合には申告期限の延長が認められています。
消費税の申告期限
個人事業者の消費税の確定申告期限は翌年3月31日です。課税期間の短縮を選択している場合は、法人同様短縮した各課税期間終了の日の翌日から2カ月以内ですが、12月を含む課税期間については3月31日となります。また、個人事業者については申告期限の延長はありません。
贈与税の申告期限
個人から財産をもらったときは、贈与税の課税対象となります。贈与税の課税対象には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、贈与を受けた人は、贈与をした人ごとにそれぞれの課税方法を選択することができます。「相続時精算課税」は、親子間などの贈与で一定の要件に当てはまる場合に選択できます。
暦年課税を選択した場合は贈与税申告書を、相続税精算課税を選択した場合は相続時精算課税選択届出書を、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに提出しなければなりません。贈与税の申告書の提出先は、原則として贈与を受けた人の住所を管轄する税務署です。
相続税の申告期限
相続税の確定申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は被相続人の死亡の日)の翌日から10カ月以内です。例えば、1月10日に死亡した場合は、その年の11月10日が申告期限になります。相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を管轄する税務署です。相続人の住所地を所轄する税務署ではないので注意が必要です。
源泉所得税
源泉所得税は、給与や報酬などを支払う事業者(源泉徴収義務者)が、支払額から一定額の所得税を徴収し納付します。令和19年12月31日までは復興特別所得税が、所得税額の2.1%上乗せして徴収されます。
原則
源泉所得税の申告期限は、源泉徴収の対象となる所得を支払った月の翌月10日です。
納期の特例
給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収をした所得税について、年2回にまとめて申告・納付することができます。納税地の所轄税務署長に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、申告・納付期限は1~6月分は7月10日、7~12月分は翌年1月20日になります。
ただし、株主に対する配当金など上記以外の所得については特例が認められていないので、原則どおり支払月の翌月10日までに申告・納税しなければなりません。
申告や納税が遅れた場合の罰則
申告期限の延長に伴い課される利子税は損金算入できますが、申告が遅れた場合に課される税金については損金算入することはできません。また、青色申告の承認が取り消される場合もあります。
延滞税
申告期限内に申告書を提出しても、納付が期限内に行われなかった場合には延滞税が課されます。延滞税については、納付期限から2カ月を境に税率が以下のとおりとなっています。
①納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間
「年7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
②納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後
「年14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
各年の延滞税の割合は以下のとおりです。
期間 |
①の割合 |
②の割合 |
令和3年1月1日~12月31日 |
2.5% |
8.8% |
令和3年1月1日~12月31日 |
2.4% |
8.7% |
令和3年1月1日~12月31日 |
2.4% |
8.7% |
令和3年1月1日~12月31日 |
2.4% |
8.7% |
令和3年1月1日~12月31日 |
2.4% |
8.7% |
無申告加算税
無申告加算税は、申告期限までに申告書を提出しなかった場合に課されます。税率は以下のとおりです。
納税額50万円以下 15%
納税額50万円超300万円以下 20%
納税額300万円超 30%
ただし、税務署からの調査前に自ら申告した場合の税率は、5%に軽減されます。また、申告期限から1カ月以内に自主的に申告期限を行った等一定の要件を満たす場合や、正当な理由があった場合は、無申告加算税は免除されます。
不納付加算税
不納付加算税は、源泉所得税の納付が遅れた場合に課されます。不納付加算税の税率は10%ですが、納付期限から1月以内に自主的に納付した場合は5%に軽減されます。また、納付期限から1月以内に納付し、過去1年以内に源泉所得税を適切に納付している場合、正当な理由がある場合には不納付加算税は免除されます。
青色申告の取り消し
青色申告が適用されている法人の場合は、2期連続で期限内に申告書が提出されない場合は、青色申告の承認が取り消されてしまいます。2期連続の期限後申告のうち、1期目については青色申告が適用されますが、2期目から青色申告が取り消されることになります。青色申告が取り消された場合は、「青色申告の承認申請書」を再提出することで適用を受けることは可能ですが、青色申告の取り消しの通知日から1年間は再申請することはできません。3月決算法人の青色申告の取消→再申請→再適用の流れは以下のとおりです。
令和3年3月期:期限後申告(青色申告)
令和4年3月期:期限後申告(青色申告)
→令和4年9月3日 青色申告取り消し通知
令和4年3月期を白色申告で修正申告
令和5年3月期:期限内申告(白色申告)
→令和5年9月4日以降 青色承認申請
令和6年3月期:期限内申告(白色申告)
令和7年3月期:期限内申告(青色申告)
上記のとおり、青色申告が取り消された場合は、3期間は青色申告が適用できません。
青色申告の承認を取り消された場合は、以下の税務上のメリットを受けることができなくなります。
・10年間の欠損金の繰越控除
・欠損金の繰戻還付
・30万円未満の減価償却資産の一括損金算入
・中小企業投資促進税制の特別償却または税額控除
なお、個人事業者は2年連続で期限後申告を行った場合でも、青色申告は取り消されることはありません。ただし、青色申告特別控除の65万円(電子申告等の要件を満たさない場合は55万円)が受けることができず、青色申告控除額は10万円に減額されます。
申告を間違えた場合
申告を間違えた場合の対応は、申告期限内と申告期限後において対応が異なります。
申告期限内
申告期限内に間違いに気付いた場合は、改めて申告書を作成し、申告期限までに再提出します。この場合は、再提出した申告書の納付金額または還付金額が対象期間の税額となります。
申告期限後
申告期限後に間違いに気付いた場合、税額を少なく申告していた場合は「修正申告」、税額を多く申告していた場合は「更正の請求」を行わなければなりません。
(1)修正申告
修正申告に明確な期限は規定されていませんが、延滞税や過少申告加算税等が課される場合があるので、早めに申告することが大切です。また、修正申告により新たに納付することになった税額は、修正申告書を提出する日までに納付しなければなりません。
(2)更正の請求
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。更正の請求書が提出されると、税務署でその内容を調査し、その請求内容が正当と認められたときは、納めすぎた税金が還付されます。
まとめ
各種税金において申告・納付期限が定められていますが、期限を過ぎてしますと様々なデメリットがあります。申告期限間際になって焦ることのないよう、余裕をもって申告作業を進めましょう。