事業を進める上で、得意先や仕入先等との関係を深め事業を円滑に進めるための「交際費」等は、非常に大切な活動費用です。このように事業にとっては非常に大事な支出でも、税務の立場からは少し違った見方をします。今回は交際費等の全体像、特に法人活動に伴い発生する交際費等を中心にまとめていきます。なお、個人事業主の事業活動に伴い通常発生する交際費等については特段の規定はなく、事業活動費用として支出額を経費に算入することが可能です。
交際費等とは
交際費等については、その定義が税法に記載があります。租税特別措置法第六十一条の四第4項には、交際費等とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」をいうとあります。ただし、以下に記載の取引については交際費等に含まれないものとして例示されています。
① 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
② 飲食費であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の人数で除して算定した金額が5,000円以下(令和6年4月より一人当たり10,000円以下)の費用
③ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
④ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
⑤ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用
交際費等の税務上の取扱い
交際費等の損金不算入額(いわゆる経費に落とせない金額の算定)
交際費等の損金不算入額の算定は期末資本金の額により異なります。
期末資本金が100億円を超える大法人の場合
支出交際費等の全額が損金不算入となります。つまり経費には一切落とせません。
期末資本金が100億円以下の大法人の場合
(支出交際費等-社外飲食費×50%)が損金不算入。つまり、社外飲食費の50%までであれば損金算入可能(経費処理可能)。
中小法人の場合
(支出交際費等-社外飲食費×50%)ないしは(支出交際費等-800万円)いずれかが損金不算入。つまり、社外飲食費×50%と800万円、いずれか大きい金額(納税者に有利)を損金に算入(経費処理)することが可能です。
「交際費等」と「飲食費」の整理
上記記載の通り、支出する「交際費等」と「社外飲食費」を理解することが非常に大切になってきます。「交際費等」とは、「飲食費」を含む広い概念です。「飲食費」については、役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出する「社内飲食費」と、それ以外の「社外飲食費」にわかれます。このうち、一定の要件の下で「一人あたり5,000円以下(令和6年4月より一人当たり10,000円以下)の社外飲食費」が交際費等の範囲から除外されます。つまり、得意先等との社外飲食のうち、一人当たり5,000円以下(令和6年4月より一人当たり10,000円以下)の社外飲食費についてはその全額が損金に算入(経費算入)することができるのです。
社内飲食費の取扱い
社内飲食費については社外飲食費と異なり一人当たり5,000円(令和6年4月より一人当たり10,000円)基準がないため、その全額が交際費課税の対象となります。また、社外飲食費×50%基準の適用もありません。ですので、福利厚生費等で処理ができる社内飲食費を除き、中小法人において定額控除限度額の800万円までしか経費算入ができないことになりますので留意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。交際費は得意先などとの関係性強化にも資する支出である一方、税務上の取扱いもケースによって異なりますので、基本的な交際費の取扱いを理解することは非常に有益なことかと思います。