「個人事業主になったけれど、何が経費になるのかさっぱり分からない…」
「領収書は溜まる一方だけど、これって本当に大事なの?」
そうお考えのあなたは、まさにこのブログを読むべき方です!
個人事業主にとって、「経費」は税金を賢く減らすための非常に重要なキーワードです。しかし、初めての方にとっては「一体何が経費になるのか?」「どうやって管理すればいいの?」と疑問だらけかもしれません。
ご安心ください。このブログでは、個人事業主が知っておくべき「経費」の基本から、具体的な品目、知っておくと便利な知識まで、初めての方にも分かりやすい言葉で徹底的に解説していきます。これを読めば、あなたも今日から自信を持って経費を管理できるようになりますよ!
そもそも「経費」って何?なぜ重要なの?
まず、「経費」とは何か、そしてなぜ個人事業主にとってこれほどまでに重要なのかを理解しましょう。
経費とは「事業を行うためにかかったお金」のこと
簡単に言うと、経費とは「事業を行うために必要だった費用」 のことです。例えば、
・取引先との打ち合わせで使ったカフェ代
・仕事で使うパソコンやソフトウェアの購入費
・事業所の家賃や光熱費
・事業を宣伝するための広告費
これらはすべて、事業を円滑に進めるために必要不可欠な費用ですよね。
経費がなぜ個人事業主にとってこれほどまでに重要なのかというと、それはあなたの「税金」と深く関係しているからです。
個人事業主が納める所得税は、収入の全額にかかるわけではありません。「売上(収入)から経費を差し引いた金額」に対して税金がかかります。この「売上から経費を差し引いた金額」を「所得」と言います。
所得 = 売上(収入)- 経費
つまり、経費が多ければ多いほど、あなたの「所得」は少なくなり、結果として支払うべき税金も少なくなる のです。
もちろん、何でもかんでも経費にできるわけではありませんが、事業に必要な支出を漏れなく経費として計上することは、節税の第一歩であり、個人事業主として賢く事業を継続していくために不可欠な知識なのです。
どんなものが経費になるの?具体的な「勘定科目」を見てみよう!
では、具体的にどんなものが経費になるのでしょうか?ここでは、個人事業主がよく使う経費の種類(勘定科目 と言います)をいくつかご紹介します。
1.消耗品費
事業活動で使用する文房具や日用品など、使用することで消耗する物品の購入費用で、一般的に、取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満のものを購入した費用です。
・文房具(ペン、ノートなど)
・コピー用紙
・プリンターのインク
・掃除用品
・10万円未満のパソコンや周辺機器、ソフトウェア(一般的に)
「これは経費になるのかな?」と迷ったら、とりあえずこの消耗品費で処理できる場合が多いです。ただし、「事業で使用するもの」 であることが大前提です。プライベートで使うものを消耗品費として計上することはできません。
2.通信費
事業で使用する通信に関する費用です。
・スマートフォンの通信料
・インターネット回線の利用料
・固定電話の通話料
・切手代、ハガキ代
自宅兼事務所でインターネット回線を使っている場合など、プライベートでも利用している場合は、事業で使用した割合に応じて按分(あんぶん)する必要があります。これについては後述します。
3.旅費交通費
事業で移動するためにかかった費用です。
・電車代、バス代、タクシー代
・飛行機代、宿泊費(出張の場合)
・高速道路料金、ガソリン代(自家用車を事業で使用した場合)
出張先での食費は、原則として経費になりませんが、旅費規程などを作成している場合は、日当として計上できるケースもあります。
4.広告宣伝費
事業の売上を増やすために、サービスや商品を宣伝する目的で使った費用です。
・ホームページの制作費用、サーバー代
・ブログやSNS広告の費用
・チラシやパンフレットの作成費用
・展示会への出展費用
5.交際費
事業に関係のある方への接待や、贈答品にかかる費用です。
・取引先との飲食費
・お歳暮、お中元などの贈答品代
・得意先への慶弔費(お祝い金、お香典など)
交際費は、税務調査で特に厳しく見られる項目の一つです。誰と、いつ、どこで、何の目的で使ったのかを明確に記録しておくことが非常に重要です。
6.地代家賃
事業で使用している土地や建物の賃料です。
・店舗や事務所の家賃
・駐車場代
自宅の一部を事務所として使っている場合は、使用している面積や時間に応じて家賃を按分することができます。
7.水道光熱費
事業で使用する電気、ガス、水道の料金です。
・電気代
・ガス代
・水道代
地代家賃と同様に、自宅兼事務所の場合は按分が必要です。
8.新聞図書費
事業に関する情報収集のために購入した書籍や雑誌の費用です。
・業界紙、専門書
・ビジネス雑誌
・新聞の購読料
娯楽目的の雑誌や漫画などは経費になりません。
9.少額減価償却資産
税法上の特例として、10万円以上30万円未満 のもの(パソコン、机、椅子など)は、「少額減価償却資産」 として、購入した年に全額経費にできる場合があります。ただし、適用には条件があります。
・青色申告をしている個人事業主であること
・年間300万円までが上限
この特例を利用することで、通常は数年かけて少しずつ経費にする「減価償却」という処理が必要な高額な資産も、購入した年にまとめて経費にできます。
「これって経費になるの?」よくある疑問を解決!
初めて経費を考える方がよく疑問に思う点をQ&A形式で解説します。
Q1. 私服は経費になりますか?
A. 基本的にはなりません。
私服はプライベートでも着用できるため、事業との明確な区別が難しいからです。ただし、「仕事に特化した服装」 であれば経費になる可能性があります。例えば、
・作業着、ユニフォーム
・制服
・イベントで着用する特定の衣装
これらは事業目的が明確なので、経費として認められる場合があります。
Q2. 食事代はすべて経費になりますか?
A. いいえ、そうではありません。
原則として、自分の食事代は経費になりません。 プライベートな支出と判断されるためです。
経費になるのは、あくまでも「事業に関わる食事」 です。
・取引先との接待飲食費:
交際費として経費になります。ただし、参加者や目的を明確に記録しておきましょう。
・会議費:
社内の打ち合わせや会議中に提供される軽食や飲み物代は、会議費として経費にできます。
・出張中の宿泊費に付随する食事代:
宿泊費の一部として認められる場合があります。
一人で食べた昼食代や、友人と個人的に食事に行った費用などは経費にはなりませんので注意が必要です。
Q3. 自宅兼事務所の場合、家賃や光熱費はどうなりますか?
A. 事業で使用している割合に応じて「按分」することで経費にできます。
自宅の一部を事務所として利用している個人事業主は非常に多いですよね。この場合、家賃や水道光熱費、インターネット回線費用など、プライベートと事業で共有している費用は、事業で使っている割合を合理的に計算して、その分だけを経費にできます。この計算方法を「按分(あんぶん)」と言います。
按分の具体例
・家賃:
自宅全体の面積のうち、事業で使用しているスペースの割合で按分します
例:自宅が100㎡で、うち10㎡を仕事部屋にしている場合、家賃の10%が経費になります。
自宅に仕事部屋がなくても、リビングなどで仕事をしている場合は、仕事をしている時間で按分する方法もあります。
・電気代・ガス代・水道代:
一般的には、事業で使用している時間や、業務で使用する機器の消費電力などを考慮して按分します。明確な基準がない場合は、おおよそ30%~50%程度を経費としているケースが多いですが、ご自身の業務内容に合わせて合理的な割合を設定しましょう。
・通信費(インターネット、携帯電話):
事業での利用頻度や時間に応じて按分します。
按分する際は、その割合を合理的に説明できる根拠(例:仕事部屋の図面、仕事時間の記録など)を残しておくことが重要です。 税務署から質問があった際に、きちんと説明できるようにしておきましょう。
Q4. クレジットカードで支払ったものはどうなりますか?
A. クレジットカードで支払った経費ももちろん認められます。
現金で支払った場合と同様に、事業に関する支出であれば経費として計上できます。
ただし、クレジットカードの明細書自体は領収書の代わりにはなりません。必ず購入した際の「領収書」や「レシート」も保管するようにしてください。 クレジットカードの明細は、いつ、どこでいくら使ったかを確認するための補助的な書類として活用しましょう。
また、事業用とプライベート用のクレジットカードを分けておく と、経費の管理が格段に楽になります。
経費を漏れなく計上するために!今日からできる管理術
ここまで「経費とは何か」「何が経費になるのか」を解説してきました。ここからは、実際に経費を漏れなく計上し、管理するための具体的な方法をお伝えします。
1.「領収書・レシート」は必ずもらう!そして捨てるべからず!
経費を証明する最も基本的な証拠は、「領収書」や「レシート」 です。
・どんなに少額でも、事業で使ったお金は必ず領収書やレシートをもらいましょう。
・受け取ったら、捨てずに大切に保管してください。
万が一、領収書がもらえなかった場合(電車賃など)は、「出金伝票」 というものを自分で作成し、いつ、どこで、何のために、いくら使ったのかを記録しておきましょう。
2.領収書・レシートの整理はこまめに!
領収書やレシートは、溜めてしまうと後で整理するのが大変になります。
・日付ごとにファイルに挟む
・月ごとに封筒に入れる
・スクラップブックに貼り付ける
など、自分に合った方法で、「こまめに」整理する習慣 をつけましょう。後で振り返った時に、何にいくら使ったのかがすぐに分かるようにしておくことが大切です。
最近では、スマートフォンのアプリでレシートを撮影してデータ化できるサービスや、クラウド会計ソフトに直接取り込める機能もあります。これらを活用すると、より効率的に管理できます。
3.事業用の銀行口座とクレジットカードを作る
プライベートの口座とごちゃ混ぜにしてしまうと、どれが事業の入出金なのかを把握するのが非常に困難になります。
事業用の銀行口座を一つ開設し、事業に関するお金のやり取りはすべてその口座で行うようにしましょう。
同様に、事業用のクレジットカードを作ることもおすすめです。経費の支払いを集約できるため、明細を見れば何が事業の支出かが一目で分かり、経費の洗い出しがスムーズになります。
4.会計ソフトを活用する
「経費管理なんて複雑そう…」そう感じる方もいるかもしれません。しかし、今は便利な「会計ソフト」 がたくさんあります。
会計ソフトを使えば、
・銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳(経費の分類)をサポートしてくれる
・レシートをスマホで撮影して取り込める機能がある
・税金計算や確定申告書の作成までサポートしてくれる
など、経費管理の手間を大幅に削減できます。
これだけは知っておきたい!経費にまつわる重要ルール
最後に、経費について知っておくべき重要なルールをいくつかご紹介します。
「家事按分」はルールに沿って合理的に!
先ほど説明した家事按分ですが、税務署に説明を求められた際に、その按分割合が「合理的である」と認められる必要があります。
感覚で割合を決めるのではなく、面積、時間、使用頻度など、具体的な根拠に基づいて算出する ようにしましょう。不明な場合は、税理士に相談することをおすすめします。
高額な資産は「減価償却」の対象になる
10万円以上のパソコンや、事業所の建物など、高額で長期間使用する資産は、その購入費用を一度に全額経費にすることはできません。
これらの資産は、その「耐用年数」 (その資産が使用できる期間)に応じて、毎年少しずつ経費として計上していく必要があります。これを「減価償却」 と言います。
例えば、30万円のパソコンを購入した場合、購入した年に全額経費にするのではなく、法定耐用年数にわたって分割して経費にしていきます。
—————————————–
減価償却費の例:
・パソコン(サーバー用は5年、その他は4年)
・自動車(車種や用途により4年~6年)
・建物(構造や用途により11年~50年)
・高額なソフトウェア
—————————————–
減価償却は少し複雑なので、最初は会計ソフトの機能に頼ったり、税理士に相談したりするのが良いでしょう。前述の「少額減価償却資産の特例」が適用できる場合は、全額経費にできることもあります。
税務署は「事業関連性」を重視する!
最も重要なのは、「その支出が本当に事業を行うために必要だったのか?」 ということです。
極端な話ですが、プライベートな旅行費用や趣味の費用を「経費だ!」と言い張っても、税務署には認められません。
すべての経費は、事業との関連性を明確に説明できる必要があります。 領収書やレシートの裏に「〇月〇日、〇〇様と打ち合わせのため」などとメモを残しておくのも、後で振り返る際に非常に役立ちます。
青色申告のメリットを最大限に活用しよう!
個人事業主には「白色申告」と「青色申告」という2種類の確定申告方法があります。
「青色申告」 を選択すると、
・最大65万円の青色申告特別控除 が受けられる(所得から65万円を差し引けるため、税金が大幅に安くなる)
・赤字を最長3年間繰り越せる
・家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
・「少額減価償却資産の特例」 が利用できる
など、税制上の様々な優遇措置が受けられます。
青色申告をするには、事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 初めて個人事業主になった方は、ぜひ青色申告を選択することをおすすめします。複式簿記での記帳が必要になりますが、会計ソフトを使えばそれほど難しくありません。
まとめ:経費を正しく理解し、賢く節税しよう!
いかがでしたでしょうか?
今回は、個人事業主にとって最も身近でありながら、奥深いテーマである「経費」について、初めての方にも分かりやすく解説してきました。
経費を正しく理解し、適切に管理することは、
1. 支払う税金を適正に抑える(節税)
2. 事業の収支を正確に把握する
3. 万が一の税務調査にも慌てず対応できる
など、個人事業主として成功するために不可欠なスキルです。
最初は少し戸惑うこともあるかもしれませんが、ご紹介したポイントを押さえて、今日から実践してみてください。
・事業に関する支出は必ず領収書をもらう!
・領収書はこまめに整理する!
・事業用とプライベート用の区別を明確にする!
・会計ソフトを活用する!
・青色申告を検討する!
もし、この記事を読んでも「やっぱりこれはどうなるの?」「もっと詳しく知りたい!」といった疑問があれば、お気軽にご相談ください。私たち税理士事務所は、あなたの事業が健全に成長していくためのお手伝いをさせていただきます。
経費と上手に付き合い、賢く節税して、あなたの事業を大きく羽ばたかせましょう!