コラム

column
2024.03.29

会社役員とは?役員の種類や仕事内容について解説します

会社設立の際には、必ず1名以上の役員を設置しなければなりません。会社法において役員の種類や役割は決められています。今回は、会社法上で定められた役員を中心にその種類や仕事内容について解説します。

会社役員とは

役員は、会社の経営方針の決定や社内の管理や監督を行います。会社には、社長・会長・専務・常務など複数の役員がいますが、会社法において役員の範囲は規定されています。

会社法上の役員

会社法第329条において、役員とは「取締役」「会計参与」「監査役」と定められていますが、会社法施行規則においては、「執行役」も役員に含まれています。なお、会長や専務、常務などは会社法に規定されたものではなく、一般的な呼称です。

執行役員との違い

執行役員は、役員が決定した事業方針に従って業務を遂行する役割を担います。日本における執行役員制度の始まりは、平成9年にソニーが導入した執行役員制度です。役員という名称がついていますが、会社法においては役員には含まれず、従業員に該当します。執行役員を設置することで、取締役は経営に専念することができ、現場における業務執行や意思決定のスピード化が期待できます。一方で、他の役職との違いや指示系統がわかりづらくなり現場の従業員の混乱を招いたり、意思決定と執行の分離により、取締役に現場の状況が伝わりにくく意思決定が実務に即さなくなるケースも考えられます。 

従業員との違い

役員と従業員のいちばんの違いは契約形態です。役員は会社からの委任を受けて就任する委任契約になりますが、従業員は会社との間で雇用契約を結びます。

従業員は労働者であるため労災保険や雇用保険が適用されますが、役員は雇用関係を結んでいないため労働基準法で定める労働者には該当せず、労災保険や雇用保険の適用がありません。ただし、役員でありながら従業員と同じように働いている場合は、従業員としての業務範囲に限り、労災保険や雇用保険の対象となります。

また、役員と従業員では給与の扱いについても違いがあります。役員に対する給与は役員報酬と呼ばれ、株主総会で決議しなければなりません。また、損金として計上するためにはいくつかの要件を満たさなければなりません。一方、従業員に対する給与は役員報酬のような決議は不要であり、会社が自由に決めることができます。

会社法上の役員

会社法上に規定されている役員の業務内容や役割について解説します。

取締役

取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を担っており、経営方針や重要事項に関する決定を行います。株式会社では必ず1名以上を、取締役会を設置する場合は3名以上の取締役を置かなければなりません。平成18年の会社法施行前は、株式会社においては取締役会の設置が義務付けられていたため、3名以上の取締役と1名の監査役の選任が必要でしたが、改正後は取締役1名でも会社を設立できるようになりました。

取締役の任期は原則として2年ですが、非公開会社、すなわち株式譲渡制限会社においては、最長10年まで任期を延長することができます。任期終了時点で再任された場合であっても、役員登記の手続きは必要です。任期が長ければ事務手続きが減り、登記料が削減されるメリットがありますが、任期途中で解任する場合に、正当な理由がない場合は損害賠償を請求されるリスクがあるので注意が必要です。正当な理由とは、職務執行上の法令・定款違反行為、心身の故障、職務への著しい不適任(経営能力の著しい欠如)が該当すると解されています。

取締役に就任することができない人が、会社法第331条に規定されています。取締役に就任できない人は次のとおりです。

①法人

②会社法その他の法律に違反して、刑の執行が終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者

③上記②以外の規定に違反して、禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わるまで、またはその執行を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者を除く)

また、会社から取締役の就任を委託されても、就任依頼を拒否することは可能です。

社外取締役

令和331日施行の改正会社法により、監査役設置会社・公開会社・大会社に該当する場合は、社外取締役の設置が義務化されました。会社法第2条により、社外取締役の選任要件が規定されています。

会計参与

会計参与は平成18年に施行された会社法により導入されました。取締役や監査役と同様に株式会社の役員ですが、他の役員とは独立した立場を維持しつつ、取締役と共同して計算関係書類を作成します。また、会社とは別にその計算書類を5年間据え置いて、会社の株主や債権者の請求に応じて、閲覧や謄本等の交付に対応することが義務付けられています。会計参与は役員であるので、取締役会や株主総会に出席して、意見・発言の権限も有しています。会計参与を設置することにより、計算書類の信頼性や正確性が担保されます。

会社法第333条により、会計参与になれるのは会計専門家である税理士(税理士法人を含む)、公認会計士(監査法人を含む)に限られており、顧問税理士も会計参与として就任することができます。なお、同条により、次の者は会計参与となることはできません。

①株式会社またはその子会社の取締役、監査役若しくは執行役または支配人その他の使用人

②業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者

③税理士法第43条の規定により税理士業務を行うことができない者

会計参与の設置は会社の任意ですが、株式譲渡制限会社において取締役会を設置していながら監査役がいない場合には、会計参与を設置しなければなりません。任期は取締役と同様に原則2年ですが、非公開会社においては10年に延長することができます。

監査役

監査役は、取締役と会計参与の職務の執行について監査する役割を担います。監査役の業務は、一般的に業務監査と会計監査に分けられます。業務監査では、取締役の職務の執行について、法定・定款に適合しているか、善管注意義務・忠実義務に違反していないかなどを監査します。会計監査では、計算関係書類が会社の財産・損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかなどについて監査します。非公開会社においては、定款の定めにより監査役の業務を会計監査に限定することができます。監査役は、監査報告書を作成し、1年間の監査の結果を株主総会で報告します。

また、監査の過程で取締役の職務執行に違法な事実を発見した場合には、取締役(取締役会)への報告、株主総会への報告、取締役の違法行為の差止請求、会社の違法行為是正および取締役の違法行為による損害賠償請求のための会社訴訟提起などの権限を有しています。

監査役に就任できない人の要件は取締役と同様です。監査役は会社法335条において、次のとおり兼任も禁止されています。

①監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人または当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。

監査役の任期は原則4年であり4年未満に短縮することはできませんが、非公開会社においては10年に延長することができます。

平成18年の会社法施行により、監査役の設置は任意となりましたが、次の場合は監査役の設置が必要です。

 ①取締役会設置会社

  非公開会社で、監査役に代えて会計参与を設置する場合は、監査役の設置は任意です。

 ②会計監査人設置会社

会計監査人とは会社の計算書類などの会計監査を行う機関で、最終事業年度の資本金5億円以上または負債の部の合計額200億円以上の大会社においては、会計監査人の設置が義務付けられています。会計監査人設置会社には、監査役を設置しなければなりません。

執行役

執行役とは、指名委員会等設置会社において業務執行を担当する機関です。会社法施行規則において役員と定義され、会社法においては、第423条に規定する「役員等」に含まれています。

指名委員会等設置会社とは、経営の透明性を高めるために導入され、経営の監督機能を担う「取締役」と業務執行を担う「執行役」が分離されています。指名委員会・監査委員会・報酬委員会という3つの委員会を設置して、取締役の選任や解任、職務内容の監査、役員報酬を決定します。各委員会は3人以上で組織する必要があり、過半数が社外取締役でなければなりません(会社法第400条)。平成15年の商法改正において「委員会等設置会社」としての導入が可能になり、平成18年の会社法改正において「委員会設置会社」に名称変更して引き継がれ、平成27年の会社法改正で現在の「指名委員会等設置会社」になりました。

取締役会

取締役会とは、3名以上の取締役が参加して、会社の業務執行についての意思決定を行う機関です。

設置義務

取締役会の設置は会社の任意となっていますが、会社法第327条において設置義務のある会社が規定されています。設置義務のある会社は次のとおりです。

 ①公開会社

 ②監査役会設置会社

 ③監査等委員会設置会社

 ④指名委員会等設置会社

開催時期

取締役会は、3カ月に1回以上の頻度で開催し、議事録を作成して本店に10年間保存しなければなりません。また、開催する場合には、開催日の1週間前までに招集通知を送る必要があり、開催場所に制限はなく、オンラインによる開催も可能です。

取締役会の職務と決議事項

取締役会が行うべき職務と決議事項は会社法第362条に定められています。取締役会が行う職務は次のとおりです。

 ①取締役会設置会社の業務執行の決定

 ②取締役の職務の執行の監督

 ③代表取締役の選定及び解職

次の事項については、取締役会において決議しなければなりません。

 ①重要な財産の処分および譲受け

 ②多額の散財

 ③支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

 ④支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

 ⑤募集社債に関する重要な事項

 ⑥取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

 ⑦定款の定めに基づく役員等の責任の免除

 ⑧その他の重要な業務執行の決定

これらの決議事項は、取締役会に取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数の賛成を得て承認されます。ただし、決議について特別の利害関係を有する取締役は、決議に参加することはできません。

取締役会のメリット

取締役会設置のメリットは、迅速な意思決定ができることです。取締役会を設置していない場合は、業務執行の決定は年1回の株主総会になりますが、取締役会は3カ月に1回で開催されているため、迅速な意思決定により会社の状況に即した経営が可能となります。また、取締役会は各取締役の職務執行を監督する職務を有しているため、取締役の独断行為を防ぎ、業務執行の適正性が取締役会によって維持されているので、取引先や金融機関などの対外的な信用を得ることができます。

取締役会のデメリット

取締役会設置のデメリットは、一定数の役員が必要になることです。取締役会設置には、取締役3名以上と監査役1名以上を選任しなければならないので、重要事項を決定するための人材の確保と、その分の役員報酬のコストが必要になります。また、取締役会は3カ月に1度の開催になるため、開催手続や議事録の作成などの事務手続きが煩雑になります。

役員の選任方法

役員の選任および解任には株主総会決議が必要です。

役員の選任

役員は、株主総会の普通決議によって選任されます。株主総会の普通決議とは、原則として、議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、その出席株主の議決権の過半数の賛成が必要になります。株主総会の普通決議の定足数は定款で引き下げたり、排除することが可能ですが、役員選任においては、定足数を議決権の3分の1未満に引き下げることはできません。

役員の解任

役員には任期がありますが、任期途中で解任することは可能です。解任には株主総会による普通決議が必要ですが、解任時の普通決議においても、選任時と同様に定足数を議決権の3分の1未満に引き下げることはできません。例外として、累積投票で選任された取締役および監査等委員である取締役の解任には、出席株主の議決権の3分の2以上が賛成する特別決議が必要です。累積投票とは、複数の役員を選任する場合に、1議決権につき選任する人数分の議決権を付与する制度です。例えば、2名の取締役を選任する場合には、100株保有している株主には100×2名=200個の議決権が付与されることになります。付与された議決権は、全て1名に投票することも、分散投票することも可能です。

まとめ

会社法により、役員は取締役・会計参与・監査役に規定されていますが、会社の任意で、会長や専務・常務、執行役員などを定めることができ、取締役会を設置することもできます。役員は会社の経営方針を決定する重要なポジションです。役員の役割や責任を理解して、会社の状況に即した組織体制を検討しましょう。