「国税局から申告漏れを指摘され、過少申告加算税を含めた追徴額は・・円」とニュースで聞くことはありませんか。期限までに申告書を提出しなかったり、納期限までに税金を納付しなかった場合は、本来の税金に加えて、ペナルティとして附帯税が課されます。今回はこの附帯税について解説します。
附帯税とは
税金には申告期限と納付期限が決められていますが、この法定期限までに申告書の提出や納付がされなかった場合には、本税以外にペナルティとして附帯税が課されます。期限内に申告書を提出していたとしても、税額が少なかった場合や、会社が故意に利益を少なく申告していた場合も、附帯税が課されます。
附帯税には加算税・延滞税・利子税があり、加算税はさらに過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税に区分されます。
附帯税の計算において、計算の基礎となる税額に1万円未満の端数がある場合はその端数を、1万円未満であるときは全額を切り捨てて計算されます。また、計算された延滞税・利子税の金額が1,000円未満、加算税の金額が5,000円未満の場合は、その全額が切り捨てられます。
過少申告加算税
過少申告加算税とは
申告期限までに確定申告書を提出した後、申告した金額が少なかったことにより修正申告書を提出した場合または税務署より更正(税務署が提出された申告書の税額を変更する手続き)を受けた場合には過少申告加算税が課税されます。
過少申告加算税は、罰則金としての性質を有しているため損金算入されません。
計算方法
過少申告加算税の金額は、新たに納めることになった税金の10%に相当する金額です。ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合は、その超過部分に対する税率は15%になります。例えば、当初の申告額が100万円、修正申告により納付すべき金額が150万円だった場合は、当初の申告納付額100万円が50万円よりも多いため、100万円については10%、100万円を超える50万円部分については15%の税率が適用されます。
加重措置
売上帳簿に関して、記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務の適正な履行を担保し、帳簿の不保存や記載不備を未然に抑止するため、令和6年1月1日以後に申告期限が到来するものについて加重措置が講じられています。税務調査で帳簿の提示又は提出を求められた際、帳簿の提示等をしなかった場合および帳簿への売上金額の記載等が本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合は10%、帳簿への売上金額の記載等が本来記載等すべき金額の3分の2未満だった場合は5%が過少申告加算税に上乗せされます。
課税されない場合
正当な理由がある場合や、税務調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税は課税されません。ただし、平成29年以後に申告期限が到来するものについては、調査の事前通知の後に修正申告をした場合は、5%(当初の申告金額と50万円のいずれか多い金額を超える部分には10%)の過少申告加算税が課されます。
無申告加算税
無申告加算税とは
申告期限を過ぎて確定申告書を提出した場合や、申告書を提出しないため税務署から決定(申告書が提出されていない場合に、税務署が税額を確定させる手続き)の処分を受けた場合には無申告加算税が課税されます。
無申告加算税は、罰則金としての性質を有しているため損金算入されません。
計算方法
無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額になります。ただし、令和6年1月1日以後に申告期限が到来するものについては、300万円を超える部分に対する税率は30%になっています。
また、税務調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、税率は5%に軽減されます。ただし、平成29年1月1日以後に申告期限が到来し、かつ、調査の事前通知の後に期限後申告をした場合は、50万円までの部分は10%、50万円を超える部分は15%の税率になっており、令和6年1月1日以後に申告期限が到来し、かつ、調査の事前通知の後に期限後申告をした場合は、50万円までの部分は10%、50万円を超え300万円までの部分は15%、300万円を超える部分の金額は25%になっています。
加重措置
過去5年以内に税務調査により無申告加算税を課された納税者には無申告加算税が10%上乗せされます。令和6年1月1日以後に申告期限が到来するものについては、その期限後申告書の前期および前々期に無申告加算税を課された場合も、無申告加算税が10%上乗せされることになります。この加重措置は、繰り返し行われる悪質な無申告行為を未然に抑止し、自主的に申告を促し、納税コンプライアンスを高める観点から講じられています。
また、売上帳簿に関しても、過少申告加算税と同様の加重措置が行われることになりました。
課税されない場合
期限後申告であっても、次の要件をすべて満たす場合には無申告加算税は課されません。
1.その期限後申告が、申告期限から1カ月以内に自主的に行われていること。
2.期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。一定の場合とは、次のいずれにも該当する場合をいいます。
・その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を納期限(口座振替の手続きをした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること
・その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと
また、正当な理由がある場合においても、無申告加算税は課されません。正当な理由とは次のような場合をいいます。
・税法の解釈に関し、申告書提出後新たに法令解釈が明確化されたため、その法令解釈と法人の解釈とが異なることとなった場合において、その法人の解釈について相当の理由があると認められること
(注)税法の不知若しくは誤解又は事実誤認に基づくものはこれに当たらない。
・調査により引当金等の損金不算入額が法人の計算額より減少したことに伴い、その減少した金額を認容した場合に、翌事業年度においていわゆる洗替計算による引当金等の益金算入額が過少となるためこれを税務上否認(いわゆるかえり否認)したこと。
不納付加算税
不納付加算税とは
源泉所得税は、原則として支払日の翌月10日までに納付しなければなりません。ただし、給与の支払人数が常時10人未満の場合、届出書を提出することにより、給与や退職金、税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬については、1月から6月の上半期分を7月10日までに、7月から12月までの下半期分を1月20日までにまとめて納付することができます。この源泉所得税の納付が遅れてしまった場合に課されるのが不納付加算税です。
不納付加算税は、罰則金としての性質を有しているため損金算入されません。
計算方法
不納付加算税の計算の基礎となる税額は、所得の種類(給与所得、退職所得、報酬・料金の所得、公的年金等所得、利子所得等、配当所得、非居住者等所得等の区分による。)ごとに、かつ、納期限の異なるごとに分けて、不納付加算税を計算します。
不納付加算税の税率は10%ですが、税務署から告知される前に自主的に納付した場合は5%に軽減されます。
課税されない場合
納付期限から1カ月以内に源泉所得税を納付し、かつ、過去1年以内において期限内に源泉所得税を納付している場合には、不納付加算税は課税されません。
また、正当な理由がある場合においても、不納付加算税は課されません。正当な理由とは次のような場合をいいます。
・税法の解釈に関し、給与等の支払後取扱いが公表されたため、その公表された取り扱いと源泉徴収義務者の解釈とが異なることとなった場合において、その源泉徴収義務者の解釈について相当の理由があると認められるとき。
(注)税法の不知若しくは誤解又は事実誤認に基づくものはこれに当たらない。
・給与所得者の扶養控除申告書、給与所得者の配偶者控除申告書又は給与所得者の保険料控除申告書に基づいてした控除が過大であった等の場合において、これらの申告書に基づき控除したことにつき源泉徴収者の責めに帰すべき事由があると認められないとき。
・最寄りの収納機関が遠隔地であるため、源泉徴収義務者が収納金融機関以外の金融機関に税金の納付を委託した場合において、その委託が通常であれば法定納期限内に納付されるに足る時日の余裕をもってされているにもかかわらず、委託を受けた金融機関の事務処理誤り等により、収納機関への納付が法定納期限後になったことが、当該金融機関の証明書等により証明されたとき。
・災害、交通・通信の途絶その他法定納期限内に納付しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められるとき。
重加算税
重加算税とは
過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税が課される状況において、事実の隠蔽や仮装があったと認められる場合は、これらの加算税に代えて課されるのが重加算税です。
隠蔽や仮装には、例として次のような場合が該当します。
・二重帳簿の作成
・帳簿、原子記録、証憑類等の帳簿書類の破棄、隠匿
・帳簿書類の改ざん等による仮装経理
・売上その他収入の脱漏
重加算税は、罰則金としての性質を有しているため損金算入されません
計算方法
過少申告加算税・不納付加算税に代えて重加算税が課される場合の税率は35%、無申告加算税に代えて重加算税が課される場合の税率は40%です。
加重措置
重加算税においても、無申告加算税と同様に、過去5年以内に税務調査により重加算税を課された納税者には無申告加算税が10%上乗せされ、令和6年1月1日以後に申告期限が到来するものについては、前期および前々期に重加算税を課された場合には、10%上乗せされることになりました。
延滞税
延滞税とは
税金が定められた期限までに納付されない場合は、原則として納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。なお、延滞税の対象となるのは本税だけなので、加算税に対して延滞税は課されません。
延滞税が課される場合の具体例は、次のような場合です。
・申告などで確定した税額を納期限までに完納しないとき
・期限後申告書または修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき
・更正または決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき
延滞税は、罰則金としての性質を有しているため損金算入されません。
計算方法
納期限の翌日から2カ月を経過する日までの税率は原則として年「7.3%」です。ただし、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合(令和2年12月31日以前は特例基準割合)+1%」のいずれか低い割合となります。具体的な割合は次のとおりです。
令和4年1月1日から令和6年12月31日 年2.4%
令和3年1月1日から令和3年12月31日 年2.5%
平成30年1月1日から令和2年12月31日 年2.6%
平成29年1月1日から平成29年12月31日 年2.7%
平成27年1月1日から平成28年12月31日 年2.8%
平成26年1月1日から平成26年12月31日 年2.9%
納期限の翌日から2カ月を経過した日以後の税率は、原則として年「14.6%」です。ただし、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合(令和2年12月31日以前は特例基準割合)+7.3%」のいずれか低い割合となります。具体的な割合は次のとおりです。
令和4年1月1日から令和6年12月31日 年8.7%
令和3年1月1日から令和3年12月31日 年8.8%
平成30年1月1日から令和2年12月31日 年8.9%
平成29年1月1日から平成29年12月31日 年9.0%
平成27年1月1日から平成28年12月31日 年9.1%
平成26年1月1日から平成26年12月31日 年9.2%
延滞税特例基準割合(特例基準割合)とは、前年の銀行の新規の短期貸出約定平均金利に年1%を加えた割合をいいます。
計算期間の特例
重加算税の計算の基礎となった部分の税額又は通告処分若しくは告発の原因となった部分の税額を除き、次の場合には一定の期間を延滞税の計算期間に含めません。
・期限内申告書が提出されていて、申告期限後1年を経過してから修正申告または更正があったとき
・期限申告書が提出されていて、その申告書提出後1年を経過してから修正申告または更正があったとき
・確定申告書を提出した後に減額更正がされ、その後さらに修正申告または更正があったとき(平成29年1月1日以後に納期限が到来する国税について適用)
利子税
利子税とは
国税について、延納または申告書の提出期限の延長が認められた場合に、その期間に応じて利子税が課税されます。
利子税は利息としての性質を有しており、附帯税のうち唯一損金算入されます。
計算方法
利子税の税率は、延滞税と同様に原則年「7.3%」です。ただし、令和3年年1月1日以後は「7.3%」と「利子税特例基準割合(令和2年12月31日以前は特例基準割合)」のいずれか低い割合となります。具体的な割合は次のとおりです。
令和4年1月1日から令和6年12月31日 年0.9%
令和3年1月1日から令和3年12月31日 年1.0%
平成30年1月1日から令和2年12月31日 年1.6%
平成29年1月1日から平成29年12月31日 年1.7%
平成27年1月1日から平成28年12月31日 年1.8%
平成26年1月1日から平成26年12月31日 年1.9%
利子税特例基準割合とは、前年の銀行の新規の短期貸出約定平均金利に年0.5%を加えた割合をいいます。
まとめ
加算税や延滞税は、罰則金としての性質を有しているため税率が高くなっています。高額の附帯税は会社の経営に大きな影響を与える場合があるので、日頃から正確な会計処理を行い、正しい申告を心掛けることが大切です。