年末年始によく耳にする「支払調書」や「法定調書」。特に起業直後はあれもこれも色々な書類を作成し、様々なところに提出している中、用語だけが先行してよくわからないままな状況が続いている事業主の方も沢山いらっしゃるかと思います。今回は「支払調書」や「法定調書」の基本を整理していきたいと思います。
支払調書と法定調書の関係
まず支払調書というのは税務署に提出が義務付けられている法定調書の一つを指します。法定調書は、所得税法、相続税法、租税特別措置法等の法律で定められた資料で、現在では60種類あります。そのうち中小企業や個人事業主で作成、提出が多い法定調書は、「給与所得の源泉徴収票」、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」、「不動産の使用料等の支払調書」になります。それではそれぞれについて見ていくことにしましょう。
「給与所得の源泉徴収票」
「給与所得の源泉徴収票」は、その年中に俸給、給料、歳費、賞与その他これらの性質を有する給与(以下「給与等」といいます。)を支払った方は、その提出を検討する必要があります。「給与所得の源泉徴収票」は以下の区分に応じてその作成と税務署への提出要否が異なりますので留意が必要です。
年末調整をしたもの
年末調整をしたもののうち、以下の区分に応じてその提出要否を検討します。
受給者の区分 | 提出範囲(その年の給与等の支払金額) |
---|---|
法人の役員等 | 150万円を超えるもの |
弁護士、公認会計士、税理士等 | 250万円を超えるもの |
上記以外の方 | 500万円を超えるもの |
年末調整をしなかったもの
年末調整をしなかったもののうち、更に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方とそれを提出しなかった方(月額表または日額表の乙欄もしくは丙欄適用者等)でその提出要否が異なります。
① 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方
受給者の区分 | 提出範囲(その年の給与等の支払金額) |
---|---|
その年に退職した方等法人の役員等 | 250万円を超えるもの(法人役員の場合には50万円を超えるもの) |
主たる給与等の金額が2,000万円を超える方 | 全部 |
② 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった方(月額表または日額表の乙欄もしくは丙欄適用者等)
その年の給与等の支払金額が50万円を超えるもの
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、バー、キャバレー等のホステス、広告宣伝のための賞金、プロ野球選手が受ける報酬、弁護士や税理士といった士業など、対象となる方に一定金額以上の支払いをしている場合には、支払先の名または名称、住所または所在地、その年の支払総額や源泉徴収税額を記載した支払調書を作成し、税務署へ提出しなければなりません。
受給者の区分 | 提出範囲 |
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外交員、集金人、電力量計の検針人、ホステス、広告宣伝のための賞金等 | 同一人に対するその年中の支払金額の合計が50万円を超えるもの |
社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬 | 同一人に対するその年中の支払金額の合計が50万円を超えるもの(ただし、国立病院等に支払うものは提出する必要はない) |
馬主が受ける競馬の賞金 | 1回の支払賞金額が75万円を超える支払を受けた方に係るその年中の全ての支払金額 |
上記以外の報酬、料金等 | 同一人に対するその年中の支払金額の合計が5万円を超えるもの |
「不動産の使用料等の支払調書」
「不動産の使用料等の支払調書」は、事務所や社宅、貸駐車場の賃料等を、同一人に対してその年に15万円を超えて支払をする法人と不動産業者である個人の方は、貸主の氏名または名称、住所または所在地、支払使用料等を記載した支払調書を作成し、税務署へ提出しなければなりません。なお、貸主が法人の場合には、権利金や更新料等のみの使用料等に限定されています。そのほか、不動産の使用に関して斡旋手数料の支払いをした場合にも別途支払調書の作成、提出の検討も必要となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。支払調書は、支払先ごとに作成する必要があり、件数が多くなればなるほど作成業務は煩雑になってしまいます。また提出時期も1月末であり、年末年始は何かと忙しい時期のためうっかり作成、税務署への提出を忘れてしまう、あるいは作成の誤りが発生するなどのリスクもあります。事業主としてはそのようなことがないよう事前に入念な準備をするとともに、最低限の基礎知識も合わせてもっておくと安心です。